2015 Fiscal Year Research-status Report
障害理解教材のハンドクラフトとICTを融合した特別支援教育専攻学生の指導法の改善
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26381304
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Research Institution | Miyagi University of Education |
Principal Investigator |
村上 由則 宮城教育大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (90261643)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 障害理解 / 病弱教育 / 教材開発 / 特別支援教育教員養成 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.病弱児の「困難体験」理解を促すハンドクラフト教材の開発・充実 27年度は、脳神経系の代表的な疾患である「てんかん」を例にとり、その発作発生メカニズムの可視化と体験可能な教材について検討した。さまざまな要因が複雑に関与し予測が難しい発作発生、臨床的に発作として観察される脳神経系の活動バランスの乱れ、てんかん患者が体験する視覚や体性感覚の異常などの理解を促す教材の作製・開発を行った。加えて、てんかん発作による「意識レベルの低下」が「情報欠落」を引き起し、適応行動を阻害する事態について体験するための、「状況」モデル型教材の開発を行った。これらを使用した授業経過を分析対象とし、「障害理解」にとっての教材作製・活用の有効性を検討した。その結果、受講学生は発作に関わる神経メカニズム、複合的要因と予測困難、情報欠落による適応の困難ついて推論的・論理的認識が可能となったと考えられる。
2.ICTを活用した「教材ライブラリー」による指導実践の検証・改善 27年度は、「ICT教材ライブラリー」タブレット版を活用し授業実践と、学生による授業内容等の評価を行った。演習形式授業の15コマのうち5コマを活用し、ライブラリーのガイダンス、学生による自由なアクセスとそれを活用した教材作製、完成教材のプレゼンテーションのスケジュールで授業を展開した。一連の授業に関して自由記述を含めたアンケートを実施し、テキストマイニングの手法も加えて分析した結果、「病気理解」「教材作製の意味」などについての学生の理解が深まることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「1.病弱児の『困難体験』理解を促すハンドクラフト教材の開発・充実」に関しては、てんかん発作(神経活動のバランスの乱れおよび発作に関わる複合的要因と予測困難)を例にとり、発作メカニズムの可視化と体験可能な教材について検討した。当初の計画の通り、プロトタイプ・モデルに基づく試作モデルの開発に至っている。また先行研究を開始した23年度から26年度まで取り扱ってきた「事物教材」に加えて、27年度は新たに「状況」モデル型とも言える教材の作製と活用についても検討した。
「2.ICTを活用した『教材ライブラリー』による指導実践の検証・改善」に関しては、「ICT教材ライブラリー」を活用し、演習形式の授業に一部取り入れ、授業内容・方法の検討を開始した。このシステムを活用した授業について、受講学生による自由記述を含めたアンケート評価の分析を行った。その結果、システムを活用した教材作製やその過程での学生間の討論等も含め、システムの活用が「病気理解」「教材を作製する意味の理解」の深まりをもたらすことが、テキストマイニングを含めた分析により確認された。
したがって、研究全体の進行状況については、当初計画と照らし合わせるとバラつきがあるが、全体としてはおおむね順調に進展していると判断するに至った。
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Strategy for Future Research Activity |
「1.病弱児の『困難体験』理解を促すハンドクラフト教材の開発・充実」に関しては、複数疾患群に共通する生活管理上の「困難」や、「身体組織の変化」、さらに日常生活動作に「困難」が生じる疾患群にも教材開発の対象を拡張する予定である。
「2.ICTを活用した『教材ライブラリー』による指導実践の検証・改善」に関しては、「ICT教材ライブラリー」の活用を一部の授業に取り入れ、その内容・方法の検討を継続する。あわせて、「困難体験」理解を促すハンドクラフト教材とライブラリー・システムを活用した授業について、受講学生を対象にした自由記述を含めた評価アンケートおよびその分析方法等の開発・改善を予定している。
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Causes of Carryover |
研究活動に必要として計画・予定し、計画通り発注した物品(教材作製に必要な消耗品)に金額が、当初の見積もりより安価であったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H28年度の助成金とあわせて年度当初に見積もり、計画的に発注するとともに、最終年度でもあり滞ることなく予算の執行に努める。
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