2015 Fiscal Year Research-status Report
発達障害児の適応スキル評定における保護者と教員のずれに関する探索的研究
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26381307
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
名越 斉子 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (30436331)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アセスメント / 発達障害 / 評定者バイアス / 特別支援教育 / 適応スキル |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、平成26年度に収集した52組の保護者・通級担当教員のASA社会適応スキル検査の回答結果を分析した。同一の発達障害ないし発達障害が疑われる事例に対する第1回目の評価結果を比較すると、全体の82.69%が保護者>教員であり、対応のある t 検定の結果、日常生活スキル(t=5.53,df,51,p<.01)、社会生活スキル(t=5.77,df=51,p<.01), 対人関係(t=2.48,df=51,p<.05)で保護者が有意に教員の結果を上回り、言語スキル(t=1.84,df=51,p<.10)は保護者が高い傾向を示した。さらに決定木ツリー分析を用い、保護者と教員それぞれの評価の高低に関わる影響因を探索的に検討したところ、保護者は子供の学年、子供の変動性、保護者の自助、教員は子供の学年、回答の不確かさ、子供の情報量、ポジティブ思考傾向が、評価の高低に関わる影響因として示唆された。7組に対して行ったインタビューでも、情報を十分に持ち合わせていない時に低い方に評価したとの報告があった。 次に、両者の評価のズレや要因を精査するために、5組の保護者と通級担当教員への継続的な関わりを行った。1回目の結果報告時に両者の結果をフィードバックし、家庭や通級における対応についてのコンサルテーションを行うとともに、7か月後の2回目評価までの間にも2回程度教員へのコンサルテーションを行った。 最後に、適応スキルを中心とした行動評定における評定者間のズレに関わる最新の研究知見を集めた。これまでは回答者側の要因に着目して分析を進めてきたが、子供の変動性要因が決定木ツリー分析からも示唆されたため、実行機能のの評価法や結果の解釈について、アメリカで情報収集を行い、1つの追跡事例で試行的に実行機能の評価を行った。現在、先の2つの結果と統合すべく、分析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度に収集したデータの分析、5事例への継続的な調査、新たな研究知見の収集はほぼ予定通りに完了した。5事例への継続的な調査の結果及び平成26年度の結果も加味した総合的な分析は途中までであるが、今後の研究進行に大きな支障はないと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の4-8月は、平成26年度と27年度に収集したデータ分析結果や新たな研究知見とを統合し、適応スキルのアセスメントの留意点、保護者と教員との共通理解や協働を含む支援のあり方について整理を行う。 8-11月は、通級担当教員やコンサルテーションに詳しい心理士の専門的助言を受けながら、適応うスキルアセスメントと支援のあり方に関するモデル事例の作成に当たる。 12-3月は、成果報告書の作成を行い、協力者や関係機関への配布を行う。この時期に限らず、途中経過についても、学会等で発表を行う予定である。
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Causes of Carryover |
平成26年度及び27年度前半の取り組みから、まずは、評価のズレに影響を及ぼす子供側の要因である実行機能に関する研究知見を取り入れるための文献等や学会参加による情報収集に優先的に時間を当てることにした。また、海外にいたこともあり、深いレベルでの専門時的助言を受けることはできなかったため、その分の予算の執行が少なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度の前半に評定者の評価のズレの分析結果や子供の実行機能の影響についての仮説について専門的助言を受けることを計画する。
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Research Products
(1 results)