2015 Fiscal Year Research-status Report
大気圧低温プラズマによる細胞内DNA損傷の定量的解析による機構解明
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26390096
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
栗田 弘史 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70512177)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | プラズマ医療 / DNA損傷 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、プラズマ医療における細胞応答の分子機構の解明に重要である細胞内DNA損傷をターゲットにしている。プラズマ照射により水溶液中に生成する活性酸素種・活性窒素種 (RONS)がプラズマ医療応用において重要な役割を果たしていることがわかってきており、本研究で扱うプラズマ装置においても、OHラジカル・過酸化水素・硝酸イオン・亜硝酸イオンが溶液中に生成していることが昨年度の研究で明らかになった。従って、水溶液中のRONSと生体分子損傷の関連はメカニズム解明に向けて重要な知見になり得る。水溶液中に生成するRONS計測には、電子スピン共鳴、蛍光プローブ、紫外線吸収などの方法が有効であり、特に蛍光プローブを用いると迅速・簡便にRONSを計測できる。一方、DNA損傷はアポトーシス誘導などのシグナル伝達経路と深く関わることから重要なターゲットであるが、従来の電気泳動に基づく解析は迅速性・定量性に欠ける。そこで今年度は、5'末端を蛍光物質で、3'末端を消光物質で修飾した、ステムループ構造をとりうるオリゴヌクレオチド (Molecular beacon: MB)を利用した、蛍光プローブによるROS検出の迅速・簡便さとDNA損傷特異性を兼ね備えた方法を考案した。酸化ストレスなどによりMBのステム部位が切断されると、それまで近接していた蛍光物質と消光物質が分離し、蛍光増大が生じる。この蛍光増大はDNA損傷を反映しており、迅速かつ定量的計測が可能であると考えた。プラズマジェットを所定の印加電圧・照射時間でMB溶液に照射し、照射後の溶液の蛍光強度を測定したところ、蛍光強度は照射時間依存的に有意に増大し、その時間変化率は放電電力に比例した。また、抗酸化剤を添加すると蛍光増大は有意に減少した。溶液中RONSがDNA損傷に寄与することを著明に示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究開始当初は巨大DNAと独自の解析手法でアプローチすることを想定していたが、今年度開発したmolecular beaconを用いた方法では、これまでよりも圧倒的に短時間で計測可能であることが示された。また、細胞内DNA損傷と試験管内DNA損傷のギャップを埋めるために、巨大DNAを人工細胞モデルに内包させ単純なモデルで実験することを考えていたが、molecular beaconは実際の細胞に導入することができると考えられる。すなわち、人工細胞モデルの構築が不要になり、かつ細胞内DNA損傷の迅速計測の実現に大きく近づいたと考えられ、当初計画以上の成果が得られる可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
当初3年目に行う予定だった細胞応答計測にはすでに着手しており、前年度の成果と合わせてプラズマ照射による細胞内DNA損傷を計測するフェーズに入ったと考えている。細胞内にDNAを導入する技術も有しており、今年度開発した手法で細胞内DNA損傷が観察可能かどうか実験的に検証する。さらにこれが観察された場合には細胞内活性種の役割が重要になると考えられる。必要な方法・試薬はすでに検討済みであり、上記と合わせて分子機構に迫る。
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Causes of Carryover |
申請時とは全く異なるより高度な新手法を考案・実証したため、当初計画と実際の使用額との差が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究の継続な推進に必要な試薬 (細胞培養液)やプラスチック製品の購入に充てる予定である。
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Research Products
(10 results)