2014 Fiscal Year Research-status Report
超高精度中性子回折データを用いた溶液構造未踏領域の開拓
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26390110
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
亀田 恭男 山形大学, 理学部, 教授 (60202024)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
天羽 優子 山形大学, 理学部, 准教授 (20363038)
臼杵 毅 山形大学, 理学部, 教授 (70250909)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 中性子回折 / 非弾性散乱 / 構造解析 / 非晶質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、どのような非晶質物質にも適用可能な、新しい非弾性散乱補正法の確立および非弾性散乱効果のために従来構造解析が行われてこなかった系の構造解析への適用を目的とする。さらに、従来行われてこなかった低濃度溶液に対する同位体置換実験を用いた高精度の構造解析方法の確立を目指す。 今年度は、J-PARC MLFに設置されているパルス中性子を線源とする中性子全散乱分光器NOVA(BL-21)により測定された、重水素(D)およびHを多量に含む溶液系について中性子散乱実験を実施し、得られた実験データに対する非弾性散乱効果補正の適用を以下の溶液系に対して試みた。 1 「6/7Li同位体置換試料を用いた、LiNO3水溶液中におけるLi+の溶媒和構造の溶液濃度依存性」 1, 5, 10mol% *LiNO3重水溶液に対して中性子回折実験を行い、溶液中におけるLi+周囲の局所構造を求めた。試料に含まれるD原子に対する非弾性散乱補正は、水素の平均散乱長を0としたH2OおよびD2Oの混合物(0H2O)の散乱強度を用いて行った。また従来行われてこなかった1mol%という低濃度領域においても良好な結果を得ることができた。Li+の水和数には濃度依存性が存在し、希薄な溶液中ではLi+の水和数は約6であることが明らかになった。 2 「中性子回折、X線回折から得られた構造因子の同時解析によるNaCl水溶液の構造解析」 水素原子に対する中性子の平均散乱長を0とした0H2Oを溶媒とする水溶液に対する新しい非弾性散乱補正方法を開発し、2, 5, 10 mol% NaCl-0H2O水溶液の構造解析を行った。Na+の水和数には濃度依存性があり、低濃度領域では約5であることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度はJ-PARC NOVA中性子全散乱分光器を用いて、水素の平均散乱長を0とした水、KCl水溶液、6Li/7Li同位体置換を施したLiNO3、LiCl、LiClO4重水溶液等の中性子散乱強度測定を実施した。測定された各散乱角度毎に同一中性子波長のデータのみを抽出し、試料の非弾性散乱補正を行い、構造因子を求める新しいデータ解析方法を開発し、Hを多量に含む水溶液系に対して適用を試みた。当初の研究計画通りに実験および構造解析を遂行することができた。 研究成果は国際学術誌および国内学会において発表している。
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Strategy for Future Research Activity |
年度計画に基づき、軽水素を多量に含む非水溶液系に対して効果的な中性子非弾性散乱補正方法の確立を目指す。本研究で開発された新しい非弾性散乱補正方法を用いて、H/D同位体置換試料に対する構造因子決定を行い、水、水溶液および非水溶液系における部分構造因子の導出を行う。 さらに、6Li/7Li同位体置換を行ったLi塩の各種非水溶液についても中性子散乱測定を行い、精密構造解析を実施する。
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Causes of Carryover |
同位体濃縮試薬(重水素化L-アラニン)の納入が遅れ、平成26年度の会計締切に間に合わなかったため、その代金180000円が次年度使用額に記載された。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
既に、上記の試薬は納品手続きが完了しており、平成27年度予算において支払手続きを行う。
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