2015 Fiscal Year Research-status Report
擬鏡映群の諸相(整数表現とブラウワーの三角形、代数群の正規環への作用)
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26400019
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Research Institution | J. F. Oberlin University |
Principal Investigator |
中島 晴久 桜美林大学, 自然科学系, 教授 (90145657)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 代数群 / 擬鏡映 / 代数的トーラス / 因子 / 自由標数 |
Outline of Annual Research Achievements |
標数pの代数閉体K上の連結とは限らないaffine代数群をGとする. Gがaffine正規代数多様体Xに代数的に作用しているようなケースを(X, G)と表記する. この作用による不変式環の高さ1の素イデアルの上にある, Xの関数環K[X]の高さ1の素イデアルPの, G作用下での慣性群I_G( P )の元を(X, G)の擬鏡映という.D_G( P )をGのPでの固定部分群とするときに, I_G( P )はK[X]/Pの商体上自明に作用するD_G( P )の元のなす部分群と同じである. 尚,これらについて既約因子の幾何的言語による定式化も可能である.これらは有限次元ベクトル空間上の線形な擬鏡映の概念を, 代数群と代数多様体へ一般化している.(X, G)の擬鏡映全体で生成されるGの部分群を群作用(X, G)の擬鏡映群R(X, G)と定義する. 任意のXに対するR(X, G)のX上での有限性が, Gの連結成分の簡約性を特徴付けるということは筆者によって以前から示されている. 主要な成果の一つとして,Gが代数的トーラスTの有限中心拡大となっているとき, Xがfactorialで自明な単元のみを持つならば, 安定な(X, G)について慣性群I_G(Q) (QはPのTによる不変部分環への制限)はI_G( P )から引き起こされることをcharacteristic freeに証明した.Xのトーリック商X//Tへの作用(X//T, G)の擬鏡映は(X, G)の擬鏡映の自然な制限に限るという意外性のある定理が, 体の標数が任意でも成り立つ.尚,この状況は非連結簡約代数群の表現を群の半単純成分で商をとり,その後全体の群で再び商をとるという二段階の商多様体の考察で自然に現れるものであり,非連結な簡約代数群の不変式論で研究上不可欠な状況である. 幾つかの応用を持つことを指摘しておく.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度の研究成果は意外性のある面白いもの,おそらくはこの分野ではそれなりに重要となるものがあり,共同研究者の存在しない単独の個人研究としては,概ね順調に推移していると評価出来る. しかし次の点では予定外の遅延が起きている.当初の予定よりも,論文にまとめる部分で多くの時間を要しており,発表という面で遅滞が見られる.前年度の成果である事項の論文執筆の過程で,ギャップが発見されて,その修復に時間を要したのが一つの理由である.幸いにしてギャップはシリアスなものとはなっておらず,修復されている.本研究は直列に積み上げる部分があり,このようなことが起きると遅延に繋がる. 標数によらないという結果を今年度出したので,複素表現とモジュラー表現については結果が出ており,ブラウアーの三角形の2つの辺については擬鏡映群についての興味深い結果を得ている.もう1辺を構成する整数表現については,研究のとっかかりを得ていないのが残念である.特にJ. Grodal et al., The Classification of p-Compact Groups for p Odd, Annals of Mathematics, Vol. 167, No. 1 (Jan., 2008), pp. 95-210の個別撃破でない代数化が可能なのかどうか,まだ分からずにいる.彼らが拙著論文を使っていることもあり,優越する手法を持っている可能性を信じたい.尤も彼らトポロジストの研究も,かなり長い年月と多くの研究者の積み重ねがあったので,やむを得ないとも言える.
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Strategy for Future Research Activity |
論文化(発表化)が遅れているので, 得られた成果について遅滞なく論文として脱稿することを優先するべきと考えている.単独による研究なので,この部分にも多くの時間を要する. その後,これらの発表を行う. 有限群の不変式論の自然な一般化になる代数的トーラスの中心拡大の不変式論について, characteristic freeに因子を用いた独自の方法で(これはCox環の構想と似ている), 組織的に研究を継続したい. factorialな多様体上で展開出来た本年度の結果を正規の場合に一般化出来るか, 同次元型の作用がfreeなcovariantsを与えるかどうか,その障害の群論的定量化(障害群), Steinbergの固定点定理についてSerre-Nakajimaの定理として知られている有限モジュラーケースがあるが,それを含む一般化が可能なのかどうかを明確にしたい. 以下の推進方策は上記の研究が困難若しくは達成した場合のことである. 標数 0 では代数的トーラスの中心拡大の上記の一般論の応用を,非連結簡約代数群の不変式の具体的な「良いタイプ」の分類を実施することで,威力を示したい.単純例外型を半単純成分に持つような群の場合には,成果を得る可能性が高い. Cartan部分群による不変式の研究を行いたい.D.I. Panyushevのunipotent群の不変式に関する研究の一般化を狙うものである.トーラスに関する知見が有効であると予想される. 整数表現の不変式論について前進が得られるようにGrondalらの前身となった上記のSteinbeg型固定点定理の整数表現版について考察したい.年季の入ったトポロジーと個別の計算に基づくGrondalらに至る研究を代数化する手段は未だ見出されていないので,萌芽的なものを見出せたら良い.長い研究の歴史を見ると困難が予想される.
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Remarks |
他に専門家向きのwebsiteを準備中であり,そこに査読の適当な時期に論文のプレプリントを掲載することを検討している.
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Research Products
(1 results)