Outline of Annual Research Achievements |
カスプ辺に対して特異点集合上にカスプ辺の入射方向の情報を加味した枠を定義し, その枠の構造方程式に現れる不変量を用いて, カスプ辺の不変量を見なおした. これにより, 今まで詳しく調べられてきたカスプ辺の不変量である特異曲率・法曲率の新しい解釈を得た. さらにカスプ方向の回転率と呼ばれる不変量の性質がより分かった. この不変量に関しては, カスプ辺の大域的な情報が得られることもわかった. また, 境界のあるカスプ辺の性質について調べ, 不変量を幾つか定義し, 性質を調べた. これにより, 平坦曲面を延長した場合に最初にあらわれる境界付きカスプ辺のジェネリックな性質がわかった. その中で, 特異点をもつ空間曲線の微分幾何的不変量についての研究が必要であったので, その研究を行った. 空間曲線の特異点があまり悪くないと, 曲率は平面曲線のカスプの時と全く同様に定義でき, 捩率も似た方法で定義できることが分かった. また, 正則点からの曲率及び捩率の極限との関係も調べた. 正則曲面の場合に詳しく研究されているコーエンデリンクの定理に関して, 特異点を持つ場合はどのようなことが起こるかを調べた. 特に, ホイットニーの傘を射影した場合, ホイットニーの傘では法線ベクトルが定まらないため, ガウス曲率も発散するだけでなく, その主要部のようなものを取り出すことができても法線ベクトルの方向に依存してしまう. 射影の特異点に沿った法線ベクトルを考えることにより, ホイットニーの傘においてもコーエンデリンク型の公式を得た. 平面の(2,5)カスプの不変量に対して, 4次の項があると偏るという事実が昔から知られていた. これを精密化し, カスプの偏り具合という不変量を定義し, 性質を調べた. また, リー球面幾何学に関連した研究を行い, 射影にあらわれる特異点を特徴づける条件を明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度までに, 多様体間の写像に現れる最も基本的な特異点であるモラン特異点の判定法を全て与え, さらにその応用が幾つかの成果を上げている. また, 以前研究したカスプ辺の微分幾何的不変量も, カスプ辺に沿う枠を使うことにより, さらに幾何学的意味が明らかになっている. それ以外にも様々な特異点に対して微分幾何的不変量が定義され, それぞれ自然な意味を持っていることが確認できた. このように, 特異点の幾何学に対して新たな事実が本研究により明らかになっており, 本研究課題は概ね順調に進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き予定通り特異点の使いやすい判定条件を作り, それを用いて写像の幾何的性質を調べる. 判定法は余階数が2の特異点の判定法を調べる. そのために多くの研究者との研究打ち合わせを行う. また, 写像芽が写像空間内で占める位置の研究も平行して行う. 応用の研究については, これまでに得られた特異点の判定法が応用できる事象をさがす. また, 高次元の特異点における曲率の振る舞い方を調べる. さらに, (2,5) カスプや (2,5) カスプ辺等の退化した特異点に対しても微分幾何的不変量を調べる.
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