2015 Fiscal Year Research-status Report
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26400123
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Research Institution | Tokyo Woman's Christian University |
Principal Investigator |
大阿久 俊則 東京女子大学, 現代教養学部, 教授 (60152039)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | D加群 / 線形微分方程式 / 超関数 / アルゴリズム / グレブナー基底 |
Outline of Annual Research Achievements |
代数解析学の対象であるD加群は線形微分方程式系を代数的にとらえた概念である。これによって微分方程式に関する問題を代数の言葉に翻訳することが可能となる。これは理論上のみならず計算(アルゴリズム)の観点からも重要である。解析学では極限操作を本質的に用いるためコンピュータによる正確な計算は困難であるが、代数学では有限の演算を扱うためコンピュータによる計算に適しているからである。このような計算代数解析学の手法は、複素数の領域における関数の研究に対しては既に多くの応用があるが、2015年度は特に実数の領域での解析学の対象である超関数を扱い、次のような成果を得た。 1. 実係数多項式 f の複素数乗(べき)は複素パラメータを持つ超関数とみなすことができ,複素パラメータについて全複素平面で有理的(特異点が極のみ)となることは1970年前後にJ. Bernstein によって示された。f が特異点を持つ場合はその複素数乗の特異点の近傍での振る舞いは複雑であり、一般的には解明されていない。そこで、f が正規交差と呼ばれる最も基本的な特異点を持つ場合に、f の複素数乗の極 -1 におけるローラン展開の係数が超関数として満たすホロノミック系(解空間が有限次元となるような強い微分方程式系)を正確に決定した。これはコンピュータによる計算実験による予想を理論的に証明したものである。 2. 上記の f の複素数乗にさらにホロノミックな(すなわちホロノミック系の解となる)局所可積分関数を掛けてできる超関数 u について,u の満たすホロノミック系と、u の極におけるローラン展開の係数が超関数として満たすホロノミック系を計算するアルゴリズムを見出し、具体例について計算実験を行った。 3. D加群のアルゴリズムの統計学への応用として、正規分布の3乗の和の分布関数がパラメータについて満たす微分方程式を導いた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は研究目的のうち、特に超関数に対する計算代数解析の立場からのアルゴリズム的および理論的研究を重点的に行い、研究実績の概要で記述したような研究成果が得られた。その過程では、本研究課題の核心である、アルゴリズムの開発と、それを用いた計算実験を契機とした理論の進展の双方で本質的な進展があった。従って、本研究課題は着実に進捗していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は概ね研究計画に従って順調に研究成果が得られている。特に実数領域における超関数に対するD加群のアルゴリズムの応用については大きな進展があった。そこでこの成果に立脚して、今後は計算代数解析の観点から、ホロノミックな超関数についての興味深い現象の発見をめざして計算実験を進め、それらの現象を理論的に解明することをめざしたい。また、研究目的のうち、Bernstein-Sato イデアル、局所コホモロジー、代数多様体上のD加群など、複素数領域でのD加群のアルゴリズムとその応用についても重点的に研究を進めたい。
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Causes of Carryover |
購入予定の書籍が品切れのため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究計画の遂行上必要な書籍等の購入に充てる。
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Research Products
(7 results)