2017 Fiscal Year Research-status Report
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26400123
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Research Institution | Tokyo Woman's Christian University |
Principal Investigator |
大阿久 俊則 東京女子大学, 現代教養学部, 教授 (60152039)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | D加群 / ファインマン積分 / ホロノミック系 / アルゴリズム / 数式処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
素粒子の衝突や生成消滅などの相互作用を記述するファインマン図式に付随して、ファインマン積分と呼ばれる積分が定義される。これはファインマン図式の外線に対応する(4次元)運動量の関数であるが、一般にその具体的な計算は困難である。ファインマン積分の被積分関数は外線と内線に対応する運動量に関する有理関数であるが、一般には発散するため、その意味づけには繰り込みと呼ばれる技法が一般に用いられる。しかし、被積分関数の有理関数をデルタ関数に置き換えて定義される積分(Cutkosky型の相空間積分と呼ばれる)は、ファインマン図形が向きづけされたサイクルを含まないとう条件の下では、超関数として意味を持つ。これらの積分の被積分関数はホロノミック系と呼ばれる強い線形偏微分方程式系を満たすため、積分もホノミック系の解となる。このことは既に1970年代に佐藤幹夫、河合隆裕、柏原正樹、H.P. Stapp らによって示されていたが、具体的にホロノミック系を求めることは困難であった。 そこで、本研究代表者によって開発されたD加群の積分の計算アルゴズムを用いてファインマン積分の満たすホロノミック系を計算することを試みた。しかし4次元時空では計算量が過大であるため、時空2次元の場合に比較的簡単なファインマン図式、特に3角形図式に付随するファインマン積分および Cutkosky型積分の満たすホロノミック系を実際に計算することに成功した。さらにこのホロノミック系の特性多様体とその重複度を求めることもできた。これは河合と本多尚文によるLandau-中西多様体についての結果とも符合し、ファインマン積分の満たすホロノミック系の特異点集合がWhitneyの傘と呼ばれる特異点と類似の性質を持つことが確認された。その際、局所b関数の計算アルゴリズムが有効に用いられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画調書に記載した4つ研究目的のうち4つはほぼ達成できた。また当初の研究計画では想定していなかったファインマン積分の満たすホロノミック系の計算を簡単なファインマン図式に対して実行することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度は本研究課題の最終年度であるため、今までに得られた研究成果を整理して再検討を加える。特に、多項式の複素冪やファインマン積分の満たすホロノミック系の計算アルゴリズムを種々の具体例に適用してその有効性を検証しながら、アルゴリズムのさらなる効率化をめざす。また、本研究課題で得られた研究成果をまとめて論文等として発表するとともに、研究代表者のホームページにおいて公表する。さらにはD加群のアルゴリズムの新たな応用分野を開拓することも目標とする。
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Causes of Carryover |
購入を検討していた書籍の国内在庫がなく年度内に納品することが困難だったため。
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