2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26400297
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
柴田 祥一 中部大学, 工学部, 教授 (20267909)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 太陽中性子 / 太陽フレア / 宇宙線 / 粒子加速 / 太陽中性子望遠鏡 / 宇宙天気 / 多方向ミューオン望遠鏡 / メキシコ |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,本研究の最終目標である「実時間解析システムの開発」にさきがけ,新型太陽中性子望遠鏡(SciCRT)の観測効率向上のため,中性子検出部およびミューオン検出部におけるデータ収集の高速化を実現した。まず名古屋大学にて,昨年度中に納品されたデータ収集用の回路ボード(バックエンドボード,以下BEB)10台の性能試験を実施し,平成27年5月にメキシコへ出荷した。メキシコのシェラネグラ山(4,600 m)での設置作業は,平成27年6・7月と11・12月の2回,本科研費による日本人2名の出張により,現地研究者の協力を得て実施した。BEBの設置後,ネットワークを介した日本からの遠隔操作と現地研究者の直接作業により,データ収集プログラムの調整を行い,平成28年2月にデータ収集の高速化を実現した。現在,すでに,このデータ収集をさらに安定化させる方法が完成しており,平成28年度内に現地で観測装置に実装する予定である。 また,平成27年の2度目の出張の際に,光検出部1800チャンネル分の変換増幅率のデータを取得した。これは,望遠鏡通過粒子の飛跡位置における光検出部での発光量と電気信号との対応を与える,入射太陽中性子のエネルギーを求めるために必要な基礎データであり,通常の太陽中性子観測中には得ることができない重要なものである。 ところで,SciCRTのデータ取得回路系では,光検出部とBEBを結ぶ信号変換回路ボード(フロントエンドボード,以下FEB)の数量が不足しており,故障時の予備がない。また,現有のFEBは高価で補充も容易ではない。そこで,かねてより安価なFEBのアイデアを温めているメキシコ自治大学の大学院生を,年度末に名古屋大学へ招聘し,日本側の研究者や技術職員と議論の上,共同で試験的な回路を設計・製作・実験し,今後のFEB開発に役立つ実験データを得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は,昨年度(研究初年度)に判明したデータ収集システムの難点を改善すべく,データー収集用の回路ボード(バックエンドボード,BEB)の改良と,現地,メキシコでの設置を行った。これらは,当初の計画外のことであり,これが原因で,全体の計画が予定よりやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度で,データー収集用の回路ボード(バックエンドボード,BEB)に対する開発は一段落し,データ収集の高速化は実現したので,今後は,現在の装置で実際の観測データを取得・蓄積しながら,これと並行して,光検出部とBEBを結ぶ信号変換回路ボード(フロントエンドボード,以下FEB)の開発を進める予定である。 また,取得・蓄積した観測データの解析を行いながら,本研究の最終目標である(1)データ圧縮,(2)太陽中性子イベントのアラート,(3)実時間解析モニターデータの自動転送,の機能を備えた実時間解析システムについても,実現に向けて開発を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
「現在までの進捗状況」で述べたように,研究初年度からの遅れが尾を引いているため,当初予定の物品の購入が遅れ,旅費や人件費・謝金の支出の変更が生じている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
計画の遅れはさほど大きくないと考えているので,当初予定の物品は次年度に購入する。また,人件費・謝金は当初計画より減る見込みであり,その分,現地メキシコでの作業,特に,実際の装置を用いた試験・調整などのための旅費にあてる予定である。
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