2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26400297
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
柴田 祥一 中部大学, 工学部, 教授 (20267909)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 太陽中性子 / 太陽フレア / 宇宙線 / 粒子加速 / 太陽中性子望遠鏡 / 宇宙天気 / 多方向ミューオン望遠鏡 / メキシコ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終目的は,宇宙線の加速のメカニズムを解明することである。そのために,地球に一番近い恒星である太陽表面において起きる,磁場エネルギーの解放である太陽フレアに伴う粒子加速現象を,太陽地球間の磁場に邪魔されることなく直進してくる中性子によって捕らえようというものである。 この目的のために,メキシコのシェラネグラ山(4,600 m)山頂に設置された新型太陽中性子望遠鏡(SciCRT)は,本来は,加速器のニュートリノ振動検出実験に使用されていたものであるが,一旦解体されて移設され,現在では,中心の8層の中性子検出部のうち3層と,それらの上下2層のミューオン検出兼荷電粒子Veto部が,太陽中性子の連続観測装置として稼働している。 本装置は,ニュートリノ現象という頻度の比較的低い現象を捕らえるために設計されたもので,高山という環境での,高頻度の宇宙線観測では,多くのバックグラウンドの現象に邪魔され,不感時間の割合が多くなってしまう。 そこで,本研究では,SciCRTのデータの実時間解析システムを実現するために,まず,「不感時間の減少」という根本的な問題の克服を目指して,データ取得回路の高速化を進めてきた。そして,昨年度までに,Open-Itプロジェクトの枠組みで,KEK測定器開発室と協力しながら,SiTCPを用いた,データの分散読み出しが可能な高速データ収集用バックエンドボード(BEB)のバージョン1.0とバージョン2.0を開発した。 本年度は,このBEBを,中性子部の1層とミューオン検出兼荷電粒子Veto部に実装し,20倍の読み出し速度を実現した。また,年度末には,中性子部の3層目に新トリガー回路を導入した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究の装置・新型太陽中性子望遠鏡は,メキシコの標高4,600 mのシェラネグラ山頂に設置されていて,メキシコ側の努力により安定な電力が供給されてきた。 しかし,平成28年4月10日に落雷があり,電力供給システムに故障が発生した。 高山の故,復旧に半年を要し,10月6日以降に安定な電力供給が復活の後,安定観測復帰に平成28年末までかかり,計画通りの研究遂行が困難となって,遅延が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに,データ取得回路の高速化として,取得データを計算機へ転送し記録するためのバックエンドボード(BEB)の開発し,光検出部とBEBとを結ぶ信号変換回路=フロントエンドボード(FEB)を進めてきた。 今後もFEBの開発と試験を進めるが,それと共に,本研究の課題である(1)データ圧縮,(2)太陽中性子イベントのアラート,(3)実時間解析モニターデータの自動転送,の機能を備えた実時間解析システムの実現にむけて努力する。
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Causes of Carryover |
研究初年度からの遅れに加え,「現在までの進捗状況」で述べたように,昨年度当初(4月10日)に,観測装置のあるメキシコ,シェラネグラ山頂にて落雷を受け,電力供給システムに故障が発生し,復旧に年末までかかってしまった。 そのため,開発したデータ収集ボードの,実装置へ装着しての試験運転が不可能となり,経費の使用が年度末の海外出張のみとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
計画が遅延したので,今年度に現地メキシコへ出張して,高速データ収集システムの最終的な運転チェックを実施したい。また,残りは,ハードディスクなど,実時間解析モニターシステムに必要な消耗品購入に使用したいと考えている。
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Research Products
(28 results)