2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26400334
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中野 岳仁 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (50362611)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ゼオライト / アルカリ金属 / ナノクラスター / 強磁性 / 中性子回折 / 磁気構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
ゼオライト結晶の配列ナノ空間中にアルカリ金属クラスターを作製することができ,様々な興味深い物性が発現する.ゼオライトA(LTA)中に単純立方構造で配列したカリウムクラスターは磁性元素を全く含まないにも拘わらず強磁性を示す.本研究の目的は,中性子回折を用いてこの系の磁気構造を直接的に明らかにし,どうしてアルカリ金属のs電子が強磁性を示しうるのかを解明することである.昨年度に大量合成した試料を用いて,本年度中性子回折実験を実施した.まず,ラザフォード・アップルトン研究所ISIS(英国)の高精度な回折計WISHを利用し,低いqまで(q > 0.15 A^-1)の回折パターンの温度依存性を詳細に測定した.これまでの研究から,この系の磁性は単純な強磁性ではなく,反強磁性配列したスピンがキャントすることによって発現していると考えられてきた.最も単純な模型として,最隣接クラスター間が反強磁性的に結合する磁気構造を想定して回折強度を計算すると,111反射に磁気回折が最も強く現れる.しかし,今回十分な統計精度で測定したデータには有意な温度変化は観測されなかった.少なくともここで想定した磁気構造の反強磁性相は否定される.一方,FRM II(ドイツ)に設置されたDNSを利用し,偏極中性子を用いた回折実験を行った.磁場を散乱ベクトルに垂直に掛け偏極解析を行ったところ,ノンスピンフロップ散乱の温度変化から200,220,222,420反射の磁気回折を観測することに成功した.これらはスピンの磁場方向成分(強磁性成分)に起因する回折である.それらの強度から見積もった磁気形状因子はqに対して速く減衰し,実空間でのスピン密度の広がりの大きさはおよそ1.5 nmであることが分かった.これは細孔のサイズに概ね一致し,ナノクラスターに広がったs電子スピンに起因する磁気散乱を観測することに成功したと考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の第一のターゲットであった,ゼオライトA中に配列したカリウムクラスターが示す強磁性の系について,信頼性の高い中性子回折データを取得することができた.目的に掲げている磁気構造の完全解明には至っていないが,従来,間接的な情報から予想されていた磁性モデルの範囲を絞り込むデータとなっており,強磁性の機構解明に寄与する成果が得られていると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に取得できた偏極中性子回折のデータでは,実験装置のq分解能(もしくは角度分解能)の制約に起因して,磁気構造モデルに制限を加える際に曖昧さの残る点が一部存在する.2016年度はJ-PARC MLFにおける中性子回折実験のビームタイムを獲得しており,これを実施する.偏極ビームを使って,より高いq分解能のデータを取得し上記の曖昧さを排除し,磁気構造モデルの範囲にさらに制限を加えることが出来ると予想している.また,次の目的の試料であって,フェリ磁性秩序を示すゼオライトLSX中のNa-K合金クラスターの大量合成と基礎物性評価を現在進めている.この系についても中性子回折実験を計画して実施する.
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Research Products
(17 results)
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[Journal Article] Absence of Jahn-Teller transition in the hexagonal Ba3CuSb2O9 single crystal2015
Author(s)
Naoyuki Katayama, Kenta Kimura, Yibo Han, Joji Nasu, Natalia Drichko, Yoshiki Nakanishi, Mario Halim,Yuki Ishiguro, Ryuta Satake, Eiji Nishibori, Masahito Yoshizawa, Takehito Nakano, Yasuo Nozue, Yusuke Wakabayashi, Sumio Ishihara, Masayuki Hagiwara, Hiroshi Sawa, and Satoru Nakatsuji
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Journal Title
Proc. Natl. Acad. Sci. USA
Volume: 112
Pages: 9305-9309
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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