2016 Fiscal Year Research-status Report
電荷注入された量子スピン鎖におけるスピン-電荷ダイナミクスの研究
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26400376
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
横尾 哲也 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 准教授 (10391707)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 量子スピン / スピンギャップ / ハルデン状態 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では電荷導入された一次元量子スピン系であるNd2-xCaxBaNiO5における電荷(ホール)と一次元鎖(ハルデン鎖)について中性子非弾性散乱によりスピン-ホールダイナミクスを観測し、導入されたホールが量子スピン鎖に与える効果を明らかにすることを目的とする。当該年度はこれまでに行ったホール濃度x=0.035およびx=0.1に加えてx=0、すなわちホールの導入されていない系における非弾性散乱実験を実施した。まずFZ法により良質な単結晶を得ることに成功し、3つの単結晶の方位を揃えた状態で試料を用意した。中性子非弾性散乱実験はJ-PARCの高分解能チョッパー分光器(HRC)を利用した。これまでに観測されたハルデンギャップ近傍を詳細に調べるための入射中性子エネルギーEi=30 meVの測定および一次元スピン鎖の励起全体を観測出来るEi=100 meVでの測定を、またそれぞれのエネルギーについて詳細な温度依存性の測定を行った。データは現在解析中であるが、一次元鎖励起状態について、ゾーン境界近傍までの非常に明瞭な動的構造の全体像を観測することに成功した。これはハルデン状態の磁気励起について完全な形で観測した初めての例である。また、ゾーン中心におけるスピンギャップの温度変化を観測し、反強磁性秩序が発達した状態にかけてそのギャップの変化の詳細をとらえることに成功した。これまでに報告した4 meVに観測された新しい励起についての温度変化も詳しく解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた研究計画に照らし合わせて解析とまとめがやや遅れ気味であるが、全体としては概ね順調に進展している。特に一年延長をした結果、今後の方策で述べるようにホール濃度のさらに濃い組成についての研究が行えるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
上述したように、高ホール濃度組成についての研究を行う。固溶限界近傍の組成を選択し、現在単結晶育成を開始している。その後これまで同様、結晶評価とアッセンブルをおこない、中性子散乱実験をおこなう。これまでの結果とここで得られた結果を併せてまとめを行う。
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