2014 Fiscal Year Research-status Report
振動分光によるカルシウム結合タンパク質の構造活性相関の解明
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26410005
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
奈良 雅之 東京医科歯科大学, 教養部, 教授 (90301168)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮川 拓也 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (50596559)
森井 尚之 独立行政法人産業技術総合研究所, その他部局等, 研究員 (80358176)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | カルシウム結合タンパク質 / 赤外分光法 / ラマン分光法 / 配位構造 / 構造機能相関 / 合成ペプチドアナログ / 凝集 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、Ca結合タンパク質ならびにそのCa結合部位の合成ペプチドアナログを用いて、赤外・ラマン分光測定によるカルボシキレート伸縮振動モード解析を行うことにより、金属イオン配位構造と振動スペクトルとの相関を解明することを目的にしている。平成26年度はカルモジュリン、カリウムチャネル、プラスティンの3つのテーマに絞って、Ca結合部位の配位構造解析を行った。 (1)タバコ由来のカルモジュリンには3種類のアイソフォーム(NtCaM1, NtCaM3, NtCaM13)が存在し、正常のタバコの葉はNtCaM3を含んでいるが、傷を受けるとNtCaM1やNtCaM13が蓄積されることが知られている。これらのアイソフォームのCa結合ドメイン(Site I~IV)に相当するペプチドアナログをそれぞれ合成して、赤外分光法によるCa配位構造解析を行った。ペプチド凝集により金属配位構造形成を阻害される場合が生じたので、合成ペプチドアナログによるアプローチの問題点を見出した。 (2)NtTPK1はタバコ細胞の液胞膜に存在するTPK型カリウムチャネルである。NtTPK1のCa結合ドメインを含む85残基のタンパク質(NtTPK1-C)に焦点を当てて、赤外分光法による配位構造の解析を試みた。その結果、Ca結合部位12位のグルタミン側鎖カルボシキレート基はCaイオンと二座配位型で結合することが示された。 (3)プラスティンは、N末端領域に2つのEFハンドモチーフを持つタンパク質である。T型およびL型プラスティンのN末端領域のEFハンドモチーフについて赤外分光法を用いてCa配位構造解析を行った。その結果、それぞれのプラスティンにおいてグルタミン酸側鎖のカルボシキレート基がCaイオンと二座配位型で結合することが確認された。L型プラスティンはEFハンドモチーフの合成ペプチドアナログのスペクトルに基づいて解釈できることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カルモジュリン、プラスティンをはじめ、タンパク質のカルシウム配位構造解析に欠かせない合成ペプチドアナログの赤外スペクトルのデータが一通りそろった状態にあり、生体分子科学討論会ならびに日本化学会春季年会等で口頭発表を行った。膜タンパク質などの複雑な系のモデルペプチドでは、水に対する溶解度が低いため、液中測定での解析が極めて困難であったが、固体フィルム法を用いることにより、赤外強度を稼ぐことが可能になり、配位構造に関する情報を得ることに成功した。さらにウサギ骨格筋トロポニンCサイトⅢの合成ペプチドアナログでは13Cラベル体の赤外測定も行われており、カルボキシレート伸縮振動バンドに関する新しい知見が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度に引き続き、合成ペプチドアナログによる振動分光解析と複雑なタンパク質系の構造活性相関解析を行う。 (1)カルボキシレート基と金属イオンの相互作用を理解するために、振動計算(密度半関数法)によるアミノ酸、ペプチドの計算化学的考察も合わせて行う。13Cラベル体による赤外スペクトル、ラマンスペクトルの同位体シフトを活用することにより、バンド強度ならびにバンド幅を重要な構造情報として加えて、構造活性相関の解析を行う。 (2)ラマン分光では、溶液中のタンパク質、ペプチドのスペクトルが検出できないことが予想されるので、固体フィルムによる解析、表面増強ラマン分光によるアプローチも行う。低波数振動領域のラマン(テラヘルツラマン)測定は、当研究室の装置だけでは難しい可能性が高く、また当初予定していた研究協力者の支援を得ることが難しくなったことから、新たに共同研究を開始することも視野に入れている。 (3)Caイオンだけなく、様々な金属イオンを用いて、金属イオンによるペプチド、タンパク質のミスフォールディングによる凝集変化をスクリーニングする方法を中赤外領域のスペクトルとラマンスペクトルで確立する。
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Research Products
(5 results)