2014 Fiscal Year Research-status Report
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26410012
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
吉井 範行 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70371599)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ミセル / 脂質膜 / 自由エネルギー / 分子動力学計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
ミセルが脂質膜表面に結合するまでの自由エネルギー変化および結合のキネティクスを、分子動力学(MD)計算を用いて評価した。球状ミセルと脂質膜純膜からなる系をシミュレーションの対象とし、ミセルのバルクから膜表面に至るまでの平均力ポテンシャルを評価した。十分に平衡化させたミセルおよび膜をそれぞれ個別に準備し、それらを1つの系にまとめ、ミセルと膜が離れた状態から互いに接触するものまでについて、初期配置を複数用意した。ミセル中心と膜中心間の距離zに拘束をかけつつMD計算を実行し、ミセルと膜の間の平均力F(z)、およびF(z)の積分より得られる平均力ポテンシャルΔG(z)を距離zの関数として評価した。ΔG(z)から、ミセルと膜表面との相互作用レンジやその強さについての解析を行った。これをもとに、バルクと膜表面との間でのミセルの分配に関する解析をおこなった。なお、本研究において用いる高並列用汎用分子動力学計算ソフト“MODYLAS”に関して、今回対象となるミセル・脂質膜共存系でも効率的に利用できるよう、直方体セルでも計算可能なように拡張をあらかじめ行い、それを用いてMD計算を実施した。平均力F(z)の揺らぎから、第二種揺動散逸定理を用いて、拡散係数D(z)をzの関数として評価した。これとΔG(z)をもとに、透過係数のモデル(J. Phys. Chem. 98,4115(1994))にしたがって解析し、結合状態と解離状態の間の移行速度の評価を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ミセルと脂質膜との間のMD計算による平均力および自由エネルギープロフィールの本計算を順調に実施できており、研究は概ね順調に実施できている。また並行して、トラジェクトリについての解析も実施している。溶媒や対イオンの効果についても検討を進めており、ミセル表面に露出する疎水基や、ミセル周囲や膜表面におけるイオン雰囲気、電気二重層の寄与についても知見を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に進めてきミセルの膜との接触までの結合過程から、さらに両者の融合過程へと研究を進める。はじめに、ミセル中の界面活性剤分子が膜に自発的に移行し融合するか否かを判定するために、ミセル中と膜中とにおける界面活性剤分子の自由エネルギーを比較し、結合状態の安定性評価を行う。これよりその後、融合のシミュレーションを実施し、融合のメカニズム解明に向けた解析を行う。
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Causes of Carryover |
研究開始当初に導入を計画していたMD計算解析用コンピュータと同等の性能を持つ後継機種の価格が下がったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
種々のミセルや膜についての検討を行っており、分子動力学計算の実行数が当初予定より多くなる可能性があるため、生成データ量も増加する見込みである。そのため、バックアップ用のレイドシステム構築のために当該予算を充てたい。
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