2016 Fiscal Year Annual Research Report
Molecular mechanism of micelle binding and fusion process to lipid membranes
Project/Area Number |
26410012
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
吉井 範行 名古屋大学, 工学研究科, 特任准教授 (70371599)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 化学物理 |
Outline of Annual Research Achievements |
薬物の細胞膜透過過程をはじめとする種々の生体分子過程において、ミセルと膜との相互作用が重要な役割を担っている。本研究では、ミセルと脂質膜との相互作用に関する微視的知見を得るために、古典系の全原子分子動力学計算による自由エネルギー解析を進めてきた。ミセルや膜単体についての溶液中における安定性の評価、およびミセル同士の相互作用についての評価を行ったうえで、ミセルのバルク水中から膜表面への結合過程について、ミセル重心と膜表面間の距離を反応座標とした自由エネルギー解析を実施した。さらに、膜表面に結合したミセルの膜への融合過程についても検討を進めた。 ミセル単体の安定性については、水中に分散したSDSの会合過程における動的スケーリング則(Chem. Phys. Lett.(2015))を初めて示し、また生成した球状ミセルの界面張力に対する局所圧力の寄与の分子論を展開した(J. Chem. Phys.(2016))。これらはいずれも親水基の静電相互作用に支配されていることを明らかにし、さらに、陰イオン性のSDSのみならず、陽イオン性のDTACや両性イオン性DDAO、非イオン性のC12E8といった異なる荷電状態の界面活性剤へと対象を拡張することによって、親水基の荷電状態とミセルの安定性、会合挙動、構造(J. Mol. Liq.(2016))との密接な関連性を明らかにした。またミセル同士、およびミセルと膜との会合過程においても、それぞれの表面の親水基近傍における電気二重層の斥力的な相互作用により、会合が著しく抑制されることが明らかとなった。速度論的な解析に基づいて会合の時定数を評価したところ、単純な球状SDSミセル同士の会合においても数十μ秒に及ぶ長い時間を要することが明らかとなった。
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