2015 Fiscal Year Research-status Report
フェムト秒フィラメンテーションの化学―金属イオンの還元,金属ナノ粒子の生成―
Project/Area Number |
26410028
|
Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
中島 信昭 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 特任教授 (00106163)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷口 誠治 公益財団法人レーザー技術総合研究所, その他部局等, 研究員 (00342725)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | フェムト秒レーザー / フィラメンテーション / 白色光 / イオン化 / 金錯体イオン / 銀イオン / 金属微粒子 / 還元反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
金属イオンを含む水溶液にフェムト秒レーザーを集光照射すると,ナノ微粒子を生成することがある.集光されたフェムト秒レーザー光に一部は白色光(Supercontinuum, SC)に変換されるが,金錯体イオン(AuCl4-)を含む場合,金微粒子を生成し,溶液は無色からワインレッドに変わり,金微粒子が生成することを確認できた.3+金属イオン(Fe3+, Eu3+, Sm3+, Yb3+)の場合はそれぞれの2+のイオンが生成し,金属(Ag, Au, Pd)の1または2価イオンではそれぞれの金属微粒子を生成した.これらの反応は溶媒(水)のイオン化とそれに続くイオンの還元反応で説明できることを明らかにした. 可視部中心に現れる吸収は金微粒子特有の表面プラズモンによるものであり,120分後,短波長側のスペクトルは少し歪んで見たが,初期原料の減少によるもので,これを利用し反応効率を求めた.効率は入射光子数に対し,0.1%であった. TEM像は1日後に測定したが,数ナノメートルの金微粒子の凝集体が見られた. 銀, 金微粒子が生成するフェムト秒レーザーパルスのエネルギーはSCが見え出す(90 fsパルス )よりは少し弱いサブマイクロジュール領域であった.この領域から水のイオン化が始まっていることを示している.従来フェムト秒レーザーによる微粒子生成は主として数百マイクロジュールのパルスエネルギーで行われていたが,今回,微粒子生成の始まりを明確に議論した. 90 fs パルス3μJの場合,約15%のレーザーエネルギーが水により吸収された.これらは水のイオン化,解離に利用されたとして解釈できる.溶質の金属,錯体イオンが多光子吸収を起こすのではないか,という説があったが,金,銀イオンの系ではそれらは無視できた.これらの結果をフルペーパーとして発表した.そのなかで反応機構を詳しく議論した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フェムト秒レーザー励起で代表的金属微粒子,Au, Ag, Pd の生成を示すことができた.レーザー照射エネルギー依存性を詳しく調べ,初めて微粒子生成の閾値を調べた.また,反応効率についても具体的に求めることができた.従来による微粒子生成は水のプラズマ破壊を出発点としているように見えたが,今回は水のイオン化が出発点となっていることを明確にしめすことができた. 水に寄り約15%のレーザーエネルギーが水により吸収されたことは驚くべきことである.このような状況でも,溶質の金属イオン,またはその錯体イオンによる吸収は無視できた.すなわち,微粒子に成長する初期原子は錯体イオンなどの直接多光子吸収によるものではなく,水のイオン化,それにつづく溶媒輪電子による金属イオンの還元反応であることをしめすことができた. 反応機構に関しほぼ結論にたっすることができ,最終年度にむけ,がっちりと基礎固めをすることができた.
|
Strategy for Future Research Activity |
1.塩化物イオンによる多光子吸収について詳しく調べる. 金属微粒子生成は水による多光子吸収,イオン化が主初期反応機構であることを昨年度までの研究であきらかにしたが,塩化物イオンが溶液中にあれば,これは水よりも効率よく多光子吸収し,溶媒和電子を放出するものと考えられる.高濃度塩化物イオンを含む水溶液にフェムト秒パルスを照射し,これを実証する.ここにEu塩を加えて,Euの3+イオンが2+イオンに還元されることを観測する.金またはPd微粒子の生成が促進されることを観測する. 2.熔融塩中でのフェムト秒パルスを照射実験を開始する.まずはフェムト秒白色光を観測し,熔融塩中でフェムト秒フィラメンテーションがおきることを確認する.金属イオンの還元反応についてしらべる.金属微粒子生成を調べる.
|
Causes of Carryover |
次年度は塩化物水溶液,熔融塩での実験を計画している.光学部品,光学石英セル,薬品を購入する.一部の計画が4月以降にずれ込んだ.
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
塩化物水溶液,熔融塩での実験計画のうち,塩化物水溶液での実験はすでに開始している.熔融塩での実験は慎重に計画している.その後,光学部品,光学石英セル,薬品を発注する.
|
Research Products
(6 results)