2014 Fiscal Year Research-status Report
グリッド型分子の物性変換機能を利用した分子素子の開発
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26410065
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
志賀 拓也 筑波大学, 数理物質系, 助教 (00375411)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 異種金属多核錯体 / 電気化学的性質 / 磁性 / 混合原子価錯体 / グリッド型分子 / 銅イオン / 鉄イオン / コバルトイオン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、自己組織化によって構築できるグリッド分子をもちいて、電気化学的な操作やその他の外場によって、多くの安定状態をとりうる分子素子の開発を目的とした。特に[3×3]グリッド型分子に着目し、様々な金属イオンを含む一連のグリッド型錯体を構築し、外部刺激によって数多くの安定状態をもつ分子素子の開発を目指して研究を進めた。これまでに、[3×3]グリッド状Cu9核錯体およびグリッドの中心に鉄イオンを含む混合原子価Cu8Fe錯体を合成している。これらのグリッド型錯体は可逆な酸化還元を示すことを明らかにしており、それぞれの酸化体・還元体の単離に成功している。 平成26年度はCu8Feグリッド型錯体の酸化体および還元体の構造・磁気的性質について詳細に調べ、各電子状態を明らかにした。特に2電子酸化体は室温以上で中心のFe(III)イオンがスピン転移することを見出している。これはスピン転移を示す異種金属多核錯体として珍しい例である。また、グリッドの中心にコバルトイオンをふくむCu8Co錯体の合成にも成功しており、5段階の可逆な酸化還元を示すことを明らかにした。 また、巨大グリッド錯体の構築を目指し、新しい配位子系の合成に着手した。ヒドラジド部位をもつ分子を原料としてもちい、逐次反応によって縮合させ、直鎖状多座配位子を得た。種々の金属塩との反応を検討し、ニッケル9核錯体および鉄4核錯体を得た。新規直鎖状多座配位子の配位様式を明らかにし、これらの知見をもとに配位子を最適化することで、巨大グリッド合成が可能となると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた銅-鉄グリッド型錯体の酸化体・還元体の物性測定を行い、各電子状態を明らかにした。また、銅-コバルトグリッド型錯体などの異なる金属イオンの集積化にも成功し、異なる配位サイトをもつグリッド型錯体は異なる電子状態の金属イオンの集積化が可能であることを明らかにした。さらに、巨大グリッド型錯体の構築に向けて新しい直鎖状多座配位子を合成し、いくつかの錯体を得ることに成功した。この新規配位子合成にもちいた反応は、汎用性の高い反応であり巨大グリッド型錯体の構築を行う上で重要なステップとなった。以上のことから、目的達成に向けておおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
[3×3]グリッド錯体においては、金属イオンの置換反応を検討し、グリッド分子内で電子移動する系やスピン転移する化合物の構築を目指す。これまでに合成したグリッド型錯体の酸化還元電位をもとに、グリッドの頂点・辺・中心の金属イオンの酸化還元電位が近くなるような金属イオンの組み合わせを探索し、必要があれば配位子の適切な部分に電子吸引基または電子供与基を導入して動的電子状態をもつグリッド型錯体を構築する。スピン転移を示す可能性のあるFe(II)、Fe(III)、Co(II)イオンなどを導入した錯体の合成も試みる。 また、巨大グリッド型錯体の構築に関しては、これまでに得られた錯体の構造・電子状態を参考にし、堅固な配位部位と柔軟な配位部位をあわせもつ新しい直鎖上配位子の合成を検討し、巨大グリッド型錯体の合理的合成を目指して研究を行う。
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Causes of Carryover |
本研究では異種金属多核錯体の合成と物性測定を中心に研究を進めているが、異種金属錯体の合成に必要な試薬及びガラス器具類は、合成条件の検討の段階では得られる化合物が不確定であるため、必要となる試薬及びガラス器具類の量は定まっていない。平成26年度の研究においては、すでに合成手法を確立している配位子合成と安価な金属イオンをもちいた錯形成反応の検討を中心に研究を行ったため、当初予定していた試薬・ガラス器具の購入量が少なくなった。その結果、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度には継続して異種金属多核錯体の合成と物性測定を中心に研究を進めるが、これまでに合成を行ったことのない新規直鎖上多座配位子の合成に着手する。したがって、前年度使用しなかった助成金をもちいて十分な量の試薬・ガラス器具等を購入し、配位子合成および多核錯体合成を検討する。
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Research Products
(17 results)