2014 Fiscal Year Research-status Report
多波長X線微小角入射散乱法による多成分複合系有機薄膜の精密構造解析とその手法確立
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26410132
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
山本 勝宏 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30314082)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 微小角入射小角X線散乱 / 薄膜 / ブロック共重合体 / ミクロ相分離構造 / 深さ分解構造解析 / 表面 / 界面 |
Outline of Annual Research Achievements |
高分子などの有機薄膜(膜厚数nmから1マイクロm)の新たな構造解析法として、様々なX線波長を利用する微小角入射X線散乱法(GISAXS)の確立をめざし、薄膜内部の空間的詳細構造解析を行った。薄膜の内部構造(相分離や非平衡状態)や、表面・界面といった微小・局所領域の構造・物性はバルクのそれらとは全く異なり、高付加価値材料創製には、薄膜の構造および構造形成・配向化、表(界)面の構造・物性を理解することが極めて重要である。特に深さ方向をnmオーダーの分解能で解析する手法は限られており、本研究は非破壊での深さ分解解析に力を発揮する手法である。本年度は高分子ブロック共重合体の静的構造(相分離構造やその構造異方性)解析を中心に遂行し、その構造形成の機構解明を目的とした。これまで解析が困難であった微小領域の構造情報と構造形成に関与する外部刺激(温度や雰囲気など)との相互作用を理解するための、低エネルギーX線によるGISAXS法の確立を目指した。 試料にはポリスチレン-b-ポリ2ビニルピリジン(S2VP)を用い、トルエン溶液からのスピンキャストによりシリコン基板上へ製膜した薄膜(膜厚み400nm)を準備した。薄膜を十分乾燥後、熱処理を行いミクロ相分離構造(シリンダー状ミクロ相分離構造)のシリンダードメインが基板表面に対して、平行に配列した試料を調整した。この試料をを用いて低エネルギーGISAXS測定により薄膜表面から数100nm程度までの深さ分解構造解析を試みた。その結果、試料表面から浅い位置では構造周期が広く、深くなるにつれて構造周期が小さくなる傾向があることが明らかとなった。これは表面近傍の高分子の分子運動性を関連し、表面近傍の高分子が緩和しやすいことを意味する結果であるといえる。深さ分解解析が可能であることを明らかにできたため、今後は構造形成のメカニズムに迫っていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験計画1年目にある、低エネルギーGISAXS測定から深さ分解ができることを確実とすることができた。またその成果報告として国際学会発表と論文出版準備まで整っている。
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Strategy for Future Research Activity |
低エネルギーGISAXS測定から深さ分解ができることを確実とすることができたことから、さまざまな条件によって、薄膜内の構造がどのように薄膜表面から変化していくかを解析していくことで、構造形成機構・配向化機構を明らかにしてゆく。また表面近傍と内部の構造がどの程度、どのように違うのかを明らかにして行くことで薄膜中の高分子鎖のダイナミクスとも絡めて議論していく。 本申請の多波長を利用するもう一つの利点である元素の吸収端近傍の波長を用いたGISAXS法(GIASAXS法)の検討を進める。この手法の確立には、まず、より構造の明確な試料の調整が必要であり、その準備から始める。
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