2014 Fiscal Year Research-status Report
狭いバンドギャップを持つZnOS量子ドット薄膜の新規合成と発光デバイスへの応用
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26410252
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
小林 健吉郎 静岡大学, 工学研究科, 教授 (20153603)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ZnOS / p型 / 量子ドット / 発光 |
Outline of Annual Research Achievements |
パルスレーザー堆積法とスパッタリング法で作製されたZnO1-xSx 薄膜は、硫黄濃度xが0<x<0.3 X >0.7の範囲にあり、x=0.5近傍では相分離を起こした。また、光学バンドギャップは、3.5から2.32.eVまで広範囲に変化した。得られた薄膜はすべてn型伝導を示した。p型のZnOS薄膜を得るため、PLDではAg2Sを添加したZnOSをターゲットとして薄膜を作製した。薄膜作製過程で硫黄蒸気を導入し、硫黄欠陥を抑制した。こうして得られたAgドープZnOSはp型を示し、Agと過剰なS添加がp型作製に有効であることが判明した。また、p型Ag-ZnOSとn型ZnOとの接合では、明確な整流特性が認められ、ホール伝導も確認できた。有効なアクセプターを帰属するため、X線電子分光測定を行った。その結果、p型を示す薄膜には、酸素と置換している硫黄の他に格子間にも硫黄が存在することが明らかになった。 亜鉛クラスターを前駆体とする化学気相法により、110℃から200℃の低温でZnOS量子ドット薄膜を作製した。125℃で作製されたZnO量子ドット薄膜の蛍光スペクトルでは360-380nmに紫外線発光を示した。一方、ZnS量子ドット薄膜は亜鉛欠陥に起因する発光を550nmに示し、これらの蛍光強度は極めて強いことが確認された。しかし、ZnOS量子ドット薄膜は、強い蛍光を示さなかった。この原因として、S添加によるバンドギャップの矮小化過程で、バンドギャップ中に多量の欠陥が導入されたものと推測した。一方、ZnOS量子ドット薄膜は、室温で大きな常磁性を示した。現在、磁気的性質を調べているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ZnOS薄膜をパルスレーザー堆積法、スパッタリング法、化学気相法という3種類の方法で作製でき、バンドギャップの大きさを硫黄濃度により制御することができた。この当初の目的は十分に達成できた。さらに、Agを添加することにより、通常作製が困難であるp型伝導も実現できたことは、研究はおおむね順調に進んでいる。しかし、ZnOSの蛍光強度が弱く、LEDの発光体への応用が難しくなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
ZnOS量子ドットの蛍光強度が弱い原因として、堆積温度が低いため結晶性が低下していることが考えられる。しかし低温で作製したZnO,ZnS量子ドットは極めて強い蛍光を示す。従って、ZnOS量子ドット薄膜の弱い蛍光強度は、薄膜作製過程で多量の欠陥が導入されていることが主な原因である。そこで、原子レベルで酸素と硫黄を規則正しく導入する原子層堆積法を導入する。
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