2015 Fiscal Year Research-status Report
ドーピング時の発光測定を用いたSiCへのウエットケミカルレーザドープの機構解明
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26420309
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
池田 晃裕 九州大学, システム情報科学研究科(研究院, 助教 (60315124)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | レーザドーピング / 4H-SiC |
Outline of Annual Research Achievements |
塩化アルミ水溶液中の発光スペクトルの測定では,コア径600um,先端ポート径660umの光ファイバを用いて,ドーピング領域から数10umの距離に近接させて測定を行った.その結果,Cl+イオン,C+からと思われるスペクトルのピーク(492, 520, 724 nm)を観測できた.しかし,ドーパントであるAl励起種からのスペクトルは検出できなかった. 一方,Al膜への大気中レーザ照射を用いたドーピングでは,Al原子,Alイオンからのスペクトルピークが観測された.発光スペクトルの解析から,Alプラズマの電子温度: 2.1 eV, 電子密度: > 8.7 × 10^15 /cm^3が導き出された.このAlプラズマがレーザのエネルギーを吸収し,AlプラズマからAl膜へ電子熱伝導などにより熱が伝達され,超高温の溶融AlがSiC上に生成し,それがAlドーピング源となっていると考えている. さらに,レーザ誘起した溶融Alによるドーピングを用いて,JBS(junction barrier Schottky)ダイオードの試作を行った.SiC上にSiO2膜によりマスクパターンを形成し,その上にAl膜を堆積してレーザ照射することで,ストライプ状にp型ドーピングを行った.試作したJBSダイオードは,pnダイオードよりも順方向立ち上がり電圧が低く,逆方向リーク電流は,Schottkyダイオードよりも1桁程度低かった(3.18mA/cm^2 @ -100V).これらの傾向は,JBSダイオードとしてリーズナブルである.今後,ガードリングなど耐圧維持のための構造をJBSのマスクレイアウトに追加し,逆リーク電流の低減,耐圧の向上を行っていく.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ドーピング機構解明を目指して,発光スペクトルを用いたドーピング時の測定を行った.先端径の細い光ファイバを用いて,ドーピング領域の極近傍に近接させることで,塩化アルミ水溶液中での励起種からのスペクトル測定に成功した.ただし,今のところはCl+, O+ イオンからの発光のみで,Al励起種からの発光スペクトルは観測されていない. 一方,大気中Al膜へのレーザ照射の場合は,Al原子,Alイオンからの発光スペクトルのピークが観測され,そのスペクトル解析から,高密度,高温のAlプラズマがSiC直上に発生していることがわかった.このAlプラズマがレーザのエネルギーを吸収し,Al膜に熱を伝達することで,超高温の溶融AlがSiC上に生成されていると考えている. また,本ドーピング技術の応用として,レーザ誘起した溶融Alによるドーピングを用いて,JBSダイオードの試作を行った.試作したJBSダイオードは,さらなるリーク電流値の低減,高耐圧化が望まれるが,pnダイオードよりも低いON電圧,Schottkyダイオードよりも低い逆リーク電流を示し,本ドーピング技術の実用化の可能性を示すことが出来たと考えている. 以上のような研究成果から,本研究はおおむね順調に推移していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
JBSダイオードやpnダイオードへの適用を考えると,より深い(~500nm)Alドーピングが求められる.塩化アルミ水溶液中でのレーザドーピングについて,これまではレーザのショット数やフルーエンスを増やしても,不純物のドーピング深さが~40nm程度と浅かった.これは,レーザビームの尖塔値が高く,ショット数を増やすとSiC表面のアブレーションも増加してしまうためである.また,1パルスあたりのビーム照射時間が短い(~55ns)も原因の1つである.そこで,KrFエキシマレーザ装置の光路上にビームスプリッタを取り付けてビームを2光路に分岐し,光路差をつけてSiCに照射することで,ビームの尖塔値の低減と1パルスあたりの照射時間の増加を図った.その結果,ショット数を増やしてもSiC表面はアブレーションされることなく,より深いドーピングが実現できた(塩化アルミ水溶液中,10 shotsでAl表面濃度:1×10^19 /cm^3,Al侵入深さ~150nm).2016年度は,このパルス幅を長くしたビームを用いて,塩化アルミ水溶液でAlをドーピングし,pnダイオード特性の評価やJBSダイオードの試作を行う予定である.また,ドーピング時の発光スペクトルの測定にもトライする.ビームパルス幅の増大に伴い,プラズマの発光時間も長くなると予想され,Al励起種のスペクトルピークが測定できる可能性があると考えている. 一方,大気中Al膜への照射を用いたドーピングでも,これまでのエキシマレーザ装置に代えて,ビームパルス幅の長いレーザ装置をもちいて実験を行う.予備実験ではパルス幅の長いレーザビームを用いることで,Alの侵入深さ:~500nmを達成している.今後,ビーム条件の最適化や,ビーム照射後のSiC表面の残渣洗浄の検討を行う予定である.
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Causes of Carryover |
物件費について,年度当初の見積額から,実際に購入したときの額が変わったため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年度に配分予定の補助金と合算して,必要な消耗品(SiCウエハ等)の購入に当てる予定である.
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