2014 Fiscal Year Research-status Report
酵母による分解と超音波霧化技術を併用した木質系廃棄バイオマスの高度有効活用
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26420537
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Research Institution | Tokyo University of Technology |
Principal Investigator |
志水 美文(下村美文) 東京工科大学, 医療保健学部, 講師 (30396759)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
斎木 博 東京工科大学, 応用生物学部, 教授 (30371503)
石河 睦生 桐蔭横浜大学, 医用工学部, 講師 (90451864)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 廃棄物再資源化 / 微生物 / 木質バイオマス / 超音波 / 乳化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は「未利用な木質系廃棄バイオマスのうち、有機成分は微生物の栄養源とし、抗菌成分は超音波霧化技術により、マスク等に塗布して総合的に活用すること」である。まず、これまで未利用な木質系廃棄バイオマス(ヒノキ、青森ヒバ等)から抗菌活性の高いヒノキチオールを抽出して分離する。そして抗菌物質が除かれた有機物質は酵母の栄養源として利用する。一方、ヒノキチオールの高い抗菌活性を生かして、マスクや衛生キャップ等の生地に塗布し、衛生用品として有効利用することを目指している。ヒノキチオールの塗布には超音波霧化技術を利用することで非常に少ない溶液量で効率的に行うことが可能となる。 具体的な実験では、木質系廃棄バイオマス(ヒノキ、青森ヒバ等)から抽出・分離した抗菌活性成分の分析を行い、青森ヒバ廃材に0.01%含まれ、強い抗菌活性を持つヒノキチオールの抽出溶液中の濃度をHPLCで分析した。次に塗布前の抽出溶液およびヒバ油自体の抗菌活性を確認した。これらを浸した生地の抗菌活性をハロー法で定性的に判断を行った。大腸菌および黄色ブドウ球菌に対する生地周辺のハローの有無によって抗菌活性を評価した。さらに、酸性油であるヒノキチオールおよびヒバ油を塗布しやすくすることを目的として、これらの溶液の乳化についても検討を行った。 一方、抗菌物質が除かれたヒノキや青森ヒバ等の木質系廃棄バイオマスを単一炭素源とする無機塩培地での酵母の増殖能力の確認を液体培地で検討した。このとき酵母エキス等を添加しない低栄養で生育させ、菌株の増殖特性を明らかにした。液体振とう培養中の酵母の増殖は一定期間ごとに、コロニーカウント法から生菌数の増加で評価した。 平成26年度に行った研究により、酵母による分解と超音波霧化技術を併用した木質系廃棄バイオマスの高度有効活用に向けて大変意義のある成果を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「1)超音波霧化技術による抗菌成分を塗布」ではまず、高圧・高温条件下で木質系廃棄バイオマス(ヒノキ、青森ヒバ等)から抽出・分離した①抗菌活性成分の分析を行った。青森ヒバ廃材に0.01%含まれ、強い抗菌活性を持つヒノキチオールの抽出溶液中の濃度およびカテキン、サポニン濃度をHPLCで分析した。そして、ヒノキチオールの抽出過程に発生するヒバ油にもヒノキチオールが1.8%含有されていることが確認できた。次に②塗布前の抽出溶液およびヒバ油自体の抗菌活性を確認した。これらを浸した生地の抗菌活性はJIS L 1902「繊維製品の抗菌性試験及び抗菌効果」に基づいたハロー法で定性的に判断を行った。大腸菌および黄色ブドウ球菌に対する生地周辺のハロー(細菌の増殖の阻止された部分)の有無によって抗菌活性を評価した。さらに、酸性油であるヒノキチオールおよびヒバ油を塗布しやすくすることを目的として、③これらの溶液の乳化についても検討を行った。 一方、「2)実際の木質系バイオマスを用いた長期分解試験」では具体的には、抗菌物質が除かれたヒノキや青森ヒバ等の木質系廃棄バイオマスを単一炭素源とする無機塩培地での④酵母の増殖能力の確認を液体培地で検討した。このとき酵母エキス等を添加しない低栄養で生育させ、菌株の増殖特性(温度、pH、培地に加える無機塩の種類の影響等)を明らかにした。液体振とう培養中の酵母の増殖は一定期間ごとに、YMC寒天培地を用いたコロニーカウント法から生菌数の増加で評価した。 また、平成26年度で得られた成果を取りまとめ、廃棄物資源循環学会および農芸化学会で発表を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度に得られた結果を基にして、「1)超音波霧化技術による抗菌成分を塗布」については、まず超音波霧化器によって抽出溶液を④栄養寒天培地に塗布を行う。抽出溶液は茶褐色なので、栄養寒天培地上に一様に塗布できているかまず、目視で観察する。さらに均一に塗布できているかをマイクロハイスコープおよび粒度分布測定装置にて明確にする。抗菌活性の効果は空中落下細菌試験方法により確認する。一般細菌が生育する栄養寒天培地を用い、抽出溶液を塗布後、栄養寒天培地のふたを1時間開放して空中落下菌を付着させて培養後、コロニー数のカウントを行う。コロニー数が増加しないこと、つまり細菌の生育が抑制されることから抽出溶液の抗菌活性を判定する。次に、⑤酸性油であるヒノキチオールおよびヒバ油の乳化溶液の抗菌活性についても確認を行う。 続いて不織布、滅菌綿等の⑥様々な生地に塗布し、塗布状態および抗菌活性の確認を行う。超音波霧化条件(超音波トランスデューサの出力、塗布回数、塗布溶液の濃度等)を変化させて、栄養寒天培地に塗布し、前述の塗布状態および抗菌活性の確認を行いながら、超音波霧化器の⑦最適霧化条件の検討を行う。 「2)実際の木質系バイオマスを用いた長期分解試験」では。分解能力を最大限に発揮できる⑧至適分解条件の決定を行う。木質系廃棄バイオマスが唯一の炭素源として含まれる培地で繰り返し、菌体の植え継ぎを行うことによって、⑨分解・資化能力向上のための馴致を行う。⑩さらに、難分解性有機物質による酵母の生育阻害についても確認を行う。 ①-⑤、⑧-⑩は研究代表者下村、⑥、⑦は研究分担者石河が主体となって実験を遂行する。研究成果は廃棄物資源循環学会等で発表するとともに学会論文誌等への論文投稿も行う。
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Causes of Carryover |
木質バイオマスからの抽出溶液中の抗菌成分の分析(委託分析)には、ヒノキチオールだけでなく、カテキン、サポニンも測定したため、当初の予定を上回る費用が必要となった。したがって本年度はその抽出溶液の成分量の解析を優先し、平成26年度に購入予定であった、木質バイオマスから抽出したヒノキチオールを生地に塗布するための2台の超音波霧化器は購入しなかった。そのため、結果として次年度使用額が生じることとなった。本年度購入しなかった超音波霧化器については次年度に購入することを検討中である。また、本年度予定していた実験補助は、学部学生によって行えたため、謝金の支払いがなく、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
消耗品費としては、ほとんどは微生物を培養するために必要な消耗試薬(微生物培養試薬類、微生物用器具類、微生物観察用器具類、ガラス器具、エタノール等)について使用する予定である。これらは、本研究を遂行するには必要不可欠なものである。分析用試薬は本研究で使用する木質バイオマスからの抽出液の成分を確認するために必要な経費である。HPLCによる抽出成分の分析は委託で行うことを計画している。さらにヒノキチオールを塗布した生地の表面解析は大学から近い東京都立産業技術研究センターの機器を使用予定である。 旅費、謝金等、その他の経費として本研究課題の成果を積極的に学会、研究会、学会誌等に発表・掲載することを予定している。したがって、本研究の成果を広く社会へ発信・公表するために必要な経費である。人件費として、実験補助を行う研究協力者への費用を予定している。効率的に実験を遂行するために学部生とともに実験を行う。
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Research Products
(8 results)