2014 Fiscal Year Research-status Report
名勝庭園内に所在する歴史的建造物の保存活用に関する基礎的研究
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26420642
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
光井 渉 東京藝術大学, 美術学部, 教授 (40291819)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 保存・再生 / 名勝庭園 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、名勝庭園に所在する歴史的建造物の保存の在り方を、国指定名勝庭園における歴史的建造物の現状調査を通じて検討を行うものである。平成26年度には、調査対象を歴史的建造物が所在する国指定名勝112件に限定し、当該名勝庭園が所在する市町村に対してアンケートを行い、指定範囲・面積・歴史的建造物の所在状況・保存管理計画・指定時の価値評価等の基本情報を入手した(95%の回答を得、未回答については問い合わせ中)。ここで入手した情報については現在取りまとめ中であるが、指定範囲の境界設定に多様な手法が見られる点や、保存管理計画における歴史的建造物の位置付けの相違など、研究開始時に想定していなかった研究の視点を見出している。次いで、名勝庭園の実地調査については、10月に山形県・新潟県の5庭園(本間氏別邸・総光寺庭園・酒井氏庭園・玉川寺庭園・渡辺家住宅庭園)、2月に京都府及び滋賀県の6庭園(本法寺庭園・白沙村荘庭園・曼殊院庭園・無隣庵庭園・滋賀院庭園・旧竹林院庭園)について実施した。実地調査にあたっては、名勝指定範囲の確認・建造物の実測調査・資料調査を行った。この実地調査においても、名勝庭園と深い関係を持つ建造物において、建築の建て替えや間取りの変更が名称指定後にも行われており、名勝庭園を構成する石組みや植栽の変更などと連動して、名勝庭園の文化財的価値が比較的最近においても変動していることを確認できた。こうした実地調査に基づく知見についても、とりまとめを行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、本来は緊密な関係の中で造られたはずの建築と庭園が、有形文化財と名勝という別個の文化財種別として把握され、それぞれの理念で保存管理がなされている現状を念頭において、両者を統合的に扱うために有効な資料及び取り扱い指針案を作成することを目的としている。そこで、研究の開始年度である平成26年度には、歴史的建造物が所在する国指定名勝庭園について、指定範囲・歴史的建造物の有無を主な対象とするアンケート調査を行うことを予定していた。平成26年の8月に開始したこのアンケート調査は、現時点で95%以上の回収率となり、全国の国指定名勝に関わる基本データを集約できた。ここで収集したデータは今後の研究計画の基本となるものである。また、個別の名勝庭園に関する実地調査についても、7件程度行う予定であったが、山形・新潟・京都・滋賀の11庭園について実施できた。これらのことから、当初想定した研究計画はおおむね順調に進展しているとみなしている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究開始年度の平成26年には、研究計画の前提となる全名勝庭園の基本情報入手のためのアンケート調査に主眼をおいた。平成27年度には、ここで得られたデータをとりまとめて報告書(pdf形式を予定)の作成を進め、その中で、特に注目すべき事例を抽出する作業を行う。この作業を基盤として、個別の名勝庭園調査対象を選出して実地調査を行う。平成27年度には、当初予定通り中四国・九州に所在する名勝庭園の中から、近年庭園内の歴史的建造物の修理が実施されたものを中心に選出し、調査を行う予定である。
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