2016 Fiscal Year Research-status Report
名勝庭園内に所在する歴史的建造物の保存活用に関する基礎的研究
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26420642
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
光井 渉 東京藝術大学, 美術学部, 教授 (40291819)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 名勝庭園 / 歴史的建造物 / 保存 / 再現 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、歴史的な評価を受けてきた人文的な景観である名勝庭園を対象とし、その内部に所在する歴史的建造物の保存の在り方を、国指定名勝庭園における現状調査を通じて検討を行うものである。平成28年度に行った研究内容は以下の3点である。まず第1には、平成27年度までに実施した歴史的建造物が所在する国指定名勝庭園112件に対するアンケート調査の分析で、平成28年度には補足事項の抽出を行った。次いで2番目は名勝庭園の実施調査で、①名古屋城二之丸庭園(名古屋市中区)・②旧諸戸氏庭園(三重県桑名市)・③諸戸氏庭園(三重県桑名市)・④栗林公園(香川県高松市)・⑤阿波国分寺庭園(徳島県徳島市)・⑥徳島城表御殿庭園(徳島県徳島市)・⑦琴弾公園(香川県観音寺市)・⑧保国寺庭園(愛媛県西条市)・⑨竹林寺庭園(高知県高知市)・⑩縮景園(広島市中区)・⑪後楽園(岡山県岡山市)・⑫頼久寺庭園(岡山県高梁市)の計12箇所について実施した。この実地調査は、昨年度までと同様に指定範囲や歴史的建造物の現状確認を中心にして実施したものである。3番目は、一昨年度に実地調査を行った滋賀院庭園に関する詳細調査で、比叡山文庫所蔵の近世史料から得られた知見を合わせて、江戸時代初期における滋賀院の建造物群の構成原理を明らかにし、それが近世を通じて維持されたことを論証した。この研究成果については、研究協力者の小柏典華と連名で論文を作成し、『日本建築学会計画系論文集』に投稿した(現在審査中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、本来密接な関係の中で創造されたはずの庭園と建造物が、名勝と有形文化財という別カテゴリーの文化財種別として管理されている状況を批判的に捉え、両者を統合的に扱うために有効な資料及び指針案の作成を主たる目的とし、その検討の中で、個々の名勝庭園の具体的な形成過程を検証する個別研究を行うものである。この全体計画の中で、平成28年度までに全国の名勝庭園に関する基礎情報の収集とその取りまとめを完了した。また、実地調査に関しても平成28年度までに54箇所について実施済となり、おおむね本年度までの予定件数を達成している。また、詳細な検討を行う個別事例検証に関しては1件について論文作成が完了し審査中であるから、研究は順調に進展しているとみなしている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の4年目である平成29年度には、既に入手した名勝庭園に関する基本情報の分析を終え、補足情報の入手を行いつつ、実地調査の継続と詳細調査対象の選出を行っていく。このうち、実地調査に関しては関東及び近畿エリアを中心に比較的小規模なもの15箇所程度実施する予定である。今年度の実地調査では、『名所図会』などの絵画資料によって過去(近世)の状況が判明しているものを中心に選出し、従来からの視点に加えて、過去と現状の変化の比較検討も実施してみたい。次に、詳細調査対象の選出にあたっては、実地調査の結果を活用しながら、庭園・建造物の構成や見方・捉え方が大きく変化し、勝その間の経緯を示す資料が存在している可能性の高い事例を抽出していきたい。また、庭園と建造物の相互関係を視覚的に表現するために、庭園の微地形の変化を建造物の断面情報と合わせて図化できる手法についても検討を行う。
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