2015 Fiscal Year Research-status Report
Nb-TiNi系水素透過合金の複相化による耐水素脆化メカニズムの解明と高信頼化
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26420719
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
石川 和宏 金沢大学, 機械工学系, 教授 (10312448)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 良穂 金沢大学, 機械工学系, 教授 (20126626)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 水素透過 / 組織制御 / 構造変化 / 結晶方位 |
Outline of Annual Research Achievements |
水素透過度と耐水素脆化性に優れたNb-TiNi共晶合金とNb-TiCo系合金を結んだ線上にあるNb-Ti(Ni, Co)合金の微細組織、水素透過度、水素吸蔵量について調べた。計算で求めた組成を有する4元系合金中には初晶bcc相が生成していたため、0.5-1%の組成調整を行いほぼ完全な共晶合金を得た。水素透過試験を行った結果、Co濃度が高くなるにつれて合金の水素透過度Φが高くなる傾向にあることが分かった。PCT試験の結果、合金の水素固溶係数Kは、Co濃度とともに小さくなることが分かった。Φ=DKの関係から水素拡散係数Dを求めると、Nb-TiNi合金ではKが大きくDが小さい、すなわち濃度勾配型の水素透過が起こっているのに対し、Nb-TiCo合金ではその逆、すなわち拡散型の水素透過が起こっていることが分かった。Nb-TiNi合金にCoを添加することでKは低下するが、Dが大きく増加するためΦが増加することが明らかとなった。 共晶Nb-TiNi合金を熱処理すると、B2母相中にbcc相が析出した組織に変化するが、熱処理条件によって水素透過度が異なることが知られていた。その原因を解明するためにEBSD法により結晶方位を測定し、水素透過度との関係について調べた。水素透過度が高い合金ではbcc相とB2相がCube-on-Cubeの関係を有しているのに対し、水素透過度が低い合金では、B2相中のbcc相の方位がランダムになることが分かった。以上より、bcc相の結晶方位が合金の水素透過度に大きな影響を与えていることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
水素透過試験とPCT試験を組み合わせ、水素透過度Φの挙動を水素固溶係数Kと拡散係数Dに分解して考察することでNb-TiNi系およびNb-TiCo系での水素透過挙動を理解することができた。 また、Nb-TiNi合金の水素化過程をSPring-8にて行った結果、bcc相とB2相の2相合金中のbcc相はbcc相の相分離を経て水素化されるが、bcc単相合金は二相分離を経ることなく水素化されることが分かった。 水素透過度を低下させることなく水素吸蔵量を低下させることが可能な添加元素の探索を行った。昨年度までに見出していた元素に加え、水素吸蔵量の低減に有効な元素を新たに見出した。 以上より、研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
・水素透過に及ぼすbcc相の方位とその制御 共晶組織を有するNb-TiNi合金を異なる条件で圧延・熱処理する。この処理により層状組織が粒状組織に変化することが分かっている。組織変化後のbcc相およびB2相の方位関係をEBSD法を用いて明らかにする。また、同合金の水素透過度を測定し、結晶方位との関係を明らかにするとともに水素の拡散経路を解明する。 ・水素透過度を維持したまま水素吸蔵量を低減可能な元素の探索 種々の遷移金属を添加したNb-TiNi合金の構造、組織、水素透過性、水素吸蔵量を測定し、水素透過性を損なうことなく水素吸蔵量を低減可能な合金元素を見出す。 ・Nb-TiNi合金の水素化過程の解明 Nb-TiNi合金におけるbcc相は、2相合金中では二相分離を経て水素化されるが、単相合金中では二相分離を経ないで水素化されることが分かった。他の合金系でも起こる現象なのか、初晶が生成する合金でも起こるものなのかを検証する。
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Causes of Carryover |
当初、水素透過度を維持したまま水素吸蔵量を低減させる添加元素の探索を行う予定であったため、合金原料購入費用を多く見積もっていた。しかし、SPring-8で測定した水素化過程に非常に興味深い結果が得られたので、本年度はデータ解析に重点を置くことにした。その結果、経費がほとんどかからない解析作業の割合が増え、経費が必要な合金探索の割合が低下し、研究経費に残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度および来年度に実施すべき項目を入れ替えただけであり、研究期間全体での実施項目に変更はない。本年度に実施する予定であった合金探索を重点的に行うため、原料購入費が増加する予定である。
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