2015 Fiscal Year Research-status Report
熱量測定に基づく高クロム鋼のミクロ組織状態変化の定量評価
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26420726
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
徳永 辰也 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40457453)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
駒崎 慎一 鹿児島大学, 工学部, 教授 (70315646)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 熱量測定 / 耐熱鋼 / 転位密度 |
Outline of Annual Research Achievements |
熱量測定に基づいて材料組織状態の変化をエネルギー変化の観点から定量的に評価するために,熱処理により硬さを変化させた9Cr-1Mo-V-Nb鋼(ASME Gr.91鋼)について熱含量変化を評価し,X線回折(XRD)プロファイル解析により得られた転位密度変化との関係を調査した.Gr.91鋼に対して焼ならし処理および焼ならし・焼戻し処理を行い,ビッカース硬さ200~350程度の試験片を得た.これらの試験片について示差走査熱量測定(DSC測定)を2回続けて行った.1回目の測定は各試験片の材料組織状態を反映したDSC曲線が得られるのに対し,2回目の測定で得られたDSC曲線は熱含量変化の基準となる材料組織状態を反映していることになる.得られた2つのDSC曲線の差を積分することで,熱処理後の各試験片の熱含量変化を算出した.また,銅触媒を用いて酸素濃度を低減させた高純度アルゴン雰囲気のグローブボックス内で各試験片の熱処理およびDSC測定を行うことで,試験片の酸化などに起因する熱含量測定の誤差の低減を図った.熱含量評価に用いた各試験片と同じ熱処理材についてXRD測定を行い,得られたプロファイルを解析して転位密度を算出した.熱含量変化については,焼ならし材に対する値が最も大きく,焼戻し材については硬さ値が減少するにつれて緩やかに低下していく傾向が見られた.熱含量変化と転位密度変化との間には相関がみられたが,熱含量変化は転位密度変化以外の寄与も含まれていることが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度において課題であった熱処理および熱含量測定の際の雰囲気については,銅触媒を用いて酸素濃度を低減させた高純度アルゴン雰囲気中のグローブボックス内で行うことにより,試験片の酸化などに起因する熱含量測定の誤差の低減を図ることができた.そのようにして評価した熱含量変化とXRDプロファイル解析に基づく転位密度変化との関連について知見を得ることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,本手法による材料組織状態評価を9Cr-0.5Mo-1.8W-V-Nb鋼(ASME Gr.92鋼)やGr.91鋼の溶接継手部材にも展開させていく.さらに,DSC測定で得られたDSC曲線そのものから得られる析出物の生成挙動との関連についても検討していく予定である.
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Research Products
(1 results)