2014 Fiscal Year Research-status Report
水素吸蔵材料高機能化に及ぼす量子ビーム照射による欠陥デザイン
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26420891
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
阿部 浩之 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター, 研究員 (30354947)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 量子ビーム / 水素吸蔵初期反応速度 / 表面改質 / 水素吸蔵合金 |
Outline of Annual Research Achievements |
量子ビーム(イオン・電子・レーザー)照射による水素吸蔵材料の表面改質・表面活性化等を施す事で水素吸蔵材料高機能化(例として自動車のバッテリーや乾電池など)を図り、照射による欠陥デザインの開発、その際の材料表面に与える影響について材料のミクロな構造変化とマクロな水素吸蔵能変化の相関を調べ、構造変化による水素吸蔵のメカニズムについて調べることを目的として、初年度は水素吸蔵材料について酸素イオン照射したサンプルについて調べた。水素吸蔵実験の測定系では、電気化学的充放電測定装置を構築し、水素吸蔵初期反応速度測定を実施した。その結果、イオン照射エネルギーの依存性が確認できた。エネルギーが低い(より表面層で生成される欠陥が多い)ほど、水素吸蔵初期反応速度(蓄電池でいうと急速充電)が速くなる傾向を見いだした。これら結果についてIBMM2014国際会議(イオンビームによる表面改質の国際会議:ルーベン/ベルギー)にて成果報告をした。 短パルスレーザー照射実験については、照射によるフルエンス(単位面積当りのレーザー照射エネルギー量)の違いと水素吸蔵初期反応速度との相関について調べ、照射前後と水素吸蔵前後のサンプルについて、高強度X線を用いたひずみ測定(回折実験)を実施した。本測定では特にレーザー照射したサンプルを中心に測定をしたが、表面界面においてレーザー照射による歪みが生じており、それが局所構造の乱れの原因となっていることが分かって来た。照射による衝撃波によるものと推測される。これらの照射による成果も次年度(H27年度)の5月26-29日開催のLAMP2015にて成果発表し、広く成果を公開する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究初年度において、水素吸蔵材料の高機能化を目指す研究で種々の量子ビーム(イオン・電子線・レーザー)を照射することで、材料表面改質をおこさせ、水素吸蔵能を向上させる研究を実施した。それにより水素吸蔵実験を通して水素吸蔵材料の高機能化を示す一つである水素吸蔵初期反応速度について調べ、この反応速度が速くなる(=電池材料として使われる水素吸蔵材料にとっては充電が速くなる)事を見いだした。量子ビーム照射においてイオン照射実験では、今年度は酸素イオン照射を実施。100 keV, 350 keV, 3 MeV, 12 MeVの照射エネルギーについてそれぞれ照射量を1E16cm-2照射を実施し、未照射と照射エネルギーの違いによる材料表面層の構造変化について調べた。酸素イオン照射の場合、低エネルギー照射の方がより材料表面層に多量の欠陥層を形成し、それにより水素吸蔵のプロセスである水素侵入を促進させ、結果として吸蔵時の反応速度が速くなったと推測される。これら結果について9月14-19日に開催されたイオンビーム照射における材料改質の国際会議(IBMM2014)に出席し、イオンビーム照射における水素吸蔵材料の高機能化とその材料表面の照射による変化について成果発表を行った。またレーザー照射については、短パルスレーザー(ナノ秒、フェムト秒)照射を実施した。フルエンス(単位面積当りのレーザー照射エネルギー量)の違いと水素吸蔵初期反応速度との相関では、あるフルエンス領域では水素吸蔵能の向上が飛躍的に向上することが判明し、適当なフルエンス量が水素吸蔵機能性に影響を及ぼすことが分かった。照射による歪み測定を大型放射光X線回折測定を実施することができた。年度末のマシンタイム故、目下データ解析中である。以上により、これら研究の進捗については当初計画の通り順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後のH27年度、H28年度の研究推進方策としては、昨年度に当該研究で挙げた水素吸蔵合金材料の価格高騰のため、購入できる材料が限られてしまった事で、種々の材料照射を実施するよりも、材料を絞り込みその中で種々の量子ビーム照射、あるいは、その照射後の局所的な構造解析等を実施することが重要であると判断している。 量子ビーム照射や照射後の分析・解析については、研究実施計画通りに進められると考えられる。 H27年度以降は引き続きイオン照射、電子線照射、レーザー照射により各照射条件による水素吸蔵を通して、照射と吸蔵との相関関係について調べ、表面改質と照射による局所的な構造の変化についてX線や中性子ビームを用いた実験を通して構造解析を進める。 また国際会議出席をしたことにより、当該成果を高評化していただいている研究者とのご協力やアドバイスもあり、高強度X線回折による分析の為の技術的なアドバイスを頂いた事もあり、H27年度以降はそれら解析技術も導入し、構造解析において大いに期待できる。
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Causes of Carryover |
当該年度にて使用予定だった、装置購入価格が円安による価格が計画時金額よりも高額となったため、前倒し支払請求を行った。その際に、計画前倒しにて打合せ等も予定されていたため、前倒し請求を実施したが、結果打合せ開催場所の変更により旅費が安く済んだ事などが理由となり次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用も計画を前倒して実験施設の利用のための移動旅費。あるいは、実験計画の打合せ等の為の旅費。 さらには、実験サンプルやその他測定系の購入額の引き上げがあるので、それらに充当したい。
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Research Products
(3 results)