2015 Fiscal Year Research-status Report
水素吸蔵材料高機能化に及ぼす量子ビーム照射による欠陥デザイン
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26420891
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
阿部 浩之 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター, 研究員 (30354947)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 量子ビーム / 水素吸蔵初期反応速度 / 表面改質 / 水素吸蔵合金 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究2年目はレーザー照射について、ナノ秒、フェムト秒といった短パルスレーザー照射を施し、各フルエンス(単位面積当たりのレーザー照射エネルギー量)とその水素吸蔵能変化について、水素吸蔵初期反応速度測定を実施した。また複数回サイクルの水素吸放出実験についても実施し、SPring-8(BL22XU)のX線回折やXPS(X線光電子分光分析法)を用いて、サンプル表面構造変化について歪み測定や表面状態分析を通して、レーザー照射と水素吸蔵能変化の相関を調べた。結果、レーザー照射により材料表面を乱すことで、水素吸蔵初期反応が速くなるということが放射光の歪み測定により判明した。ナノ秒とフェムト秒レーザー照射では、そのパルス幅の違いにより、後者は非熱加工が可能であり、照射によって表層部にGPaという超高圧波が発生し、表面モホロジーが大きく変化しランダムな表面状態が表面積増加となり、水素吸蔵初期反応が速くなるということが放射光の歪み測定により判明した。 一方、電子線照射による水素吸蔵能変化についても調べた。照射エネルギーは1MeVと2MeVに別けて照射エネルギー依存性と、更に電子線照射環境(大気、真空、不活性ガス雰囲気)の違いによる水素吸蔵能変化についても調べた。結果として、1MeVにおける大気中照射が明らかに吸蔵能向上に寄与していることが水素吸蔵初期反応速度測定により分かり、SEM(走査型電子顕微鏡)測定で合金表面層にナノワイヤが生成していることが判明した。これらナノワイヤの一つ一つの表面積が水素吸蔵能を向上させるのに寄与してるものと考えられる。 以上より、レーザー照射に関する成果は、2015年5月開催のLAMP2015と2016年3月の応用物理学会にて発表した。また電子線照射に関する成果は、2016年8月開催の水素吸蔵の国際会議(MH2016)にて発表することで、広く成果を公開する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度でイオン照射、レーザー照射(予察実験)を施すことで水素吸蔵材料表面改質を起こさせ、水素吸蔵を向上させる研究を実施し、吸蔵材料の高機能化となる、水素吸蔵初期反応速度(蓄電池として利用される水素吸蔵材料にとっては充電の速さに相当)が速くなる結果が得られた。2年目では初年度に続き、レーザー照射を様々な条件で水素吸蔵能の分析ができた。初年度は予察実験、今年度は、種々のレーザー照射条件の規格化を図るために”フルエンス”を定義し、ナノ秒、フェムト秒レーザー照射により各フルエンスとその水素吸蔵能の変化について、水素吸蔵初期反応速度測定を通して調べた。更にSPring-8(BL22XUライン)を利用し、材料表面の歪み測定や表面状態分析としてXPSを用いて、合金表面構造変化についてレーザー照射と水素吸蔵能変化の相関を調べた。 更に、電子線照射による水素吸蔵能変化について、電子線照射環境の違い(大気、真空、不活性ガス雰囲気)とそのそれぞれの環境において、照射エネルギー1MeVと2MeVにそれぞれ別けて調べた。結果、1MeVにおける大気中照射が明らかに吸蔵能向上に寄与していることが分かり、SEM(走査型電子顕微鏡)測定で合金表面層にナノワイヤが生成していることが判明した。これらナノワイヤの一つ一つの表面積が結果として水素吸蔵能を向上させるのに寄与してることがわかった。 今年度までに、当初研究計画である測定系の構築、各量子ビームにおける水素吸蔵量の測定、複数回の水素級放出による吸蔵能変化についての測定実施できている。使用済み合金についての再活性化について、レーザー照射実験が予想以上の照射条件の必要性があったため、遅れてしまっているのはあるが、その他については計画通り遂行できていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度(H28年度)は、現在までの進捗状況において計画より若干遅れている使用済み吸蔵合金の再活性化を量子ビーム照射により行い、それら相関関係について調べる。ただし、使用済みサンプルはすでにアルカリ溶液に十分浸った状態で使用済みとなるため、これら十分乾燥させて量子ビーム照射を実施する必要がある。これらペレットは非常にもろくなっているため、その取り扱いには十分気をつける必要がある。 また、現在までで、量子ビーム照射と水素吸蔵能との相関を調べ、得られた吸蔵能向上に関わる実験データで更に必要と考えらる条件での追試を実施していくと共に、同様に表面分析も行っていき、総合的な総括を進める。今年度は、昨年度実施した電子線照射についての水素吸蔵能変化について得られた知見について8月に15th International Symposium on Metal-Hydrogen Systems: MH2016という水素吸蔵の国際会議に出席し、その成果を広く公開する予定である。
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Causes of Carryover |
本研究初年度(H26年度)において、前倒し請求を行ったが、その後、本年度においては、前年度前倒し請求を全額使い切らず、翌次年度(本年度)に回したこと。レーザー照射実験や大型放射光施設による測定実験課題が採択され、そのマシンタイムが予想より多く取得できたため、そのための実験旅費や打ち合わせ開催場所への移動旅費に費やすことを余儀なくされた(研究サポートしていただいた方々は分担者ではなく、先方都合になることが多い為、当方が指定会場へ移動することになる)。ちなみに実験用サンプル購入については、初年度にサンプルの種類を早々に変更し限定したため、2年目に新規購入する必要がなく、実験遂行できた。以上の種々の理由により次年度使用額が生じた
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は最終年度であるので、当該研究の成果発表を国際会議にて発表する。この為の会議参加費用、旅費。また追試実験や分析用の実験に必要なサンプル作製のための周辺機器の機材等交換や新規購入費用、さらには分析実験の為の施設利用の移動旅費や実験計画の打ち合わせ会場への旅費、論文投稿費用等、それらに充当する予定である。
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Research Products
(10 results)