2015 Fiscal Year Research-status Report
Parkinの新規基質IPASの解析によるパーキンソン病発症メカニズムの解明
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26430051
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
鳥居 暁 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 講師 (10444001)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | IPAS / パーキンソン病 / PINK1 / Parkin |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、PINK1-Parkin経路の新規基質として見出したタンパク質IPASの解析を行うことによりパーキンソン病発症メカニズムの解明に繋げることと、これらの神経変性疾患に関わるオートファジーの新規分子シグナル機構の解明を行うことである。本年度においては、前年度に見出されたミトコンドリアのIPASがPINK1-Parkin経路によって制御される機構に関して、さらに詳しい解析を行った。その結果、IPASはスレオニンの12番目を含むいくつかのアミノ酸がCCCP依存的にPINK1によってリン酸化されることを見出した。さらに既知の基質との周辺配列の相同性が高い12番目のスレオニンをアラニンに置換したT12A変異体を作製したところ、IPASとParkinとの結合が起きなくなることを見出した。このことからIPASはPINK1-Parkinによって高度に制御されて分解されていることがわかった。またIPASはParkinのユビキチンリガーゼ活性に重要なリング配列の疾患型変異体とは結合が弱まることがわかった。さらにパーキンソン患者組織の解析により、IPASの発現量がこの患者特異的に中脳黒質で増加されていることが示された。これらの結果からIPASがPINK1-Parkin経路によってリン酸化とユビキチン化を受け分解されること、さらにParkinの変異などによってその制御の破綻が起きた際にIPASが蓄積して神経細胞死を誘発しパーキンソン病発症に関与している可能性があることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
IPASのPINK1によりリン酸化される必須のスレオニンが見出されると共に、さらにParkinによるIPASの分解にこのリン酸化が必須であることが解明され、制御メカニズムの解明が大きく進展したと考えられる。さらに実験計画の主軸を占めるパーキンソン患者組織の解析が行われ、IPASの発現量増加が見出されたことは、進歩が順調に進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の解析で見出されたIPASのスレオニン12番目の抗リン酸化抗体を作製し、細胞での内在性IPASのリン酸化を解析する。また、IPASノックアウトマウスからマウス胎児繊維芽細胞を樹立し、IPASによる細胞死のさらなる検証を行う。加齢により黒質でレビー小体が誘発されることがあることから、前年度から準備したマウスを用いて加齢によるIPASの発現量の差がないか解析する。また、分解されないで残ったリン酸化IPASの蓄積が見られるか抗リン酸化抗体で解析する。さらに抗体を用いて、MPTP投与マウスにおけるIPASの発現誘導、局在をより詳しく解析する。ミトコンドリアマーカーMitoGreenもしくはTom20抗体を用いることで、内在性IPAS/リン酸化IPASがミトコンドリアに局在することを明らかにする。IPASが発現していても小脳プルキンエ細胞においては細胞が死なないことからミトコンドリア局在の制御等があることが期待される。 ヒトパーキンソン病の患者を含めたより多くの症例(組織サンプル)を用いてIPASの挙動を解析する。内在性IPAS/リン酸化IPASの蓄積の有無、αシヌクレイン抗体を用いたレビー小体での共局在、ミトコンドリアや核の異常(アポトーシス)等を検討する。 PINK1/Parkinの下流ではミトコンドリアオートファジー(マイトファジー)が起こり、ミトコンドリアが除去されることがわかっている。IPASはBcl-xLと結合してアポトーシスを制御するが、Bcl-xLなどのBcl-2ファミリーはオートファジー制御因子Beclin1とも結合することから、オートファジー経路との関わりに着目して研究を行う。また、IPASとは逆に神経保護作用を持つタンパク質との相互作用も解析する。
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Research Products
(2 results)