2014 Fiscal Year Research-status Report
iPS細胞を含む生殖機能細胞のエネルギーフリー長期室温保存に関する研究
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26430207
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
多田 昇弘 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50338315)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | マウス / 生殖機能細胞 / 受精卵 / 卵子 / 室温保存 / 長期 / トレハロース / 真空乾燥 |
Outline of Annual Research Achievements |
生殖機能細胞をエネルギーフリーで保存できる新規な真空乾燥・室温保存法を開発することを目的として、本研究を実施した。 【方法】種々の濃度のトレハロースを含むTris-EGTA (TE) あるいはPB1, M2, TE及びmCZB-hepes単独あるいは0.1Mトレハロースを含む保存液にB6D2F1マウス由来2-細胞期胚あるいは桑実期胚を浸漬し、4~24時間室温下で乾燥・保存した。保存後、ミリQ水、M2, 0.3M スクロースあるいは0.1Mトレハロース/TEのいずれかを保存液中に添加した。その後、胚を回収し、培養することで胚の発生を確認した。 【結果および考察】2-細胞期胚を用いた保存では、0.1M, 0.5M, 1.0M及び1.5Mトレハロース/TEにて4~24時間室温下で乾燥・保存後、回収されたすべての胚で発生は認められなかった。また、桑実期胚を用いた保存では、0.1Mトレハロース/TE中にて胚を4, 6及び24時間保存後、0.3Mスクロース等を添加し、回収したところ、各々23~43%, 31~50%及び0%が胚盤胞に発生した。次いで、PB1, M2, TE及びmCZB-hepesで桑実期胚を室温下にて4, 6, 24及び48時間保存し、胚を回収した後、培養したところ、各々90~100%, 78~89%, 62~77%及び17~33%が胚盤胞に発生した。更に、これらの保存液に0.1Mトレハロースを含む保存液にて桑実期胚を室温下で6, 24及び48時間保存し、胚を回収した後、培養したところ、各々80~100%, 43~86%, 17~33%が胚盤胞に発生した。以上の結果から、室温保存する場合、2-細胞期胚より桑実期胚の方が、保存性が良好な事、桑実期胚は48時間の室温保存でも胚盤胞に発生する事、並びに胚の室温保存におけるトレハロースの保護効果は、認められない事がわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は、当初、マウス卵子(未受精卵)の真空乾燥・室温保存法について至適条件を決めるために、種々の保存液、保存容器等について検討を行ったが、保存後の生存性がまったく認められず、体外受精まで実施することはできなかった。そこで、マウス初期胚(2-細胞期胚、桑実期胚)についての真空乾燥及び室温保存を試み、保存後の発生能を確認することにより、正常性を検討した。その結果、真空乾燥・室温保存に有用な保存液を見出すことができた。また、2-細胞期胚では、4時間の室温保存でも胚発生は認められなかったが、桑実期胚では、4~48時間の室温保存のいずれの場合でも、生存しており、胚発生が認められた。このことから、最も、真空乾燥・室温保存に耐性を有するのは、桑実期胚であり、少なくとも保存48時間は、正常性が維持できることがわかった。従って、当初の卵子を用いた実験では、予想に反して、保存性が不良であることがわかったが、桑実期胚を用いることで、室温保存の可能性があることが明らかになったことから、概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
マウスの卵子、初期胚(2-細胞期胚、桑実期胚、胚盤胞)、ES細胞及びiPS細胞等、生殖機能細胞の真空乾燥・室温保存に関する研究を順次進めて行くが、更なる真空乾燥法及び保存液の検討が必要である。特に、保存液の検討は急務であり、PB1, M2及びmCZB-hepesをベースとしてトレハロース、エピカテキン、アスコルビン酸、ウシ血清アルブミン及びデキストラン40等の真空乾燥・室温保存における効果をマウス桑実期胚を用いて確認する。また、真空乾燥時における温度及び保存容器についても至適条件を決める必要がある。これらの条件が決まり次第、マウスES細胞の真空乾燥・室温保存も試みる。
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Causes of Carryover |
実験が予想以上に円滑に進んだため、実験に使用するマウスの匹数及び消耗品(保存容器、保存容器、試薬類)の消費が少なかった。、また、当該研究の成果を学会等で発表する段階まで達しておらず、旅費も発生しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は、真空・乾燥及び室温保存に有効な保存液及び保存方法を開発するために、新たに試薬及び保存容器等を購入する。また、マウス胚及びES細胞を用いるので、胚採取用や胚移植用のマウス、保存後の培養に用いる培養液を作製するための試薬、及び基本培地の購入が必要である。 なお、得られた研究成果の国内外での学会発表も予定している。
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