2015 Fiscal Year Research-status Report
iPS細胞を含む生殖機能細胞のエネルギーフリー長期室温保存に関する研究
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26430207
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
多田 昇弘 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50338315)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | マウス / 生殖機能細胞 / 受精卵 / 卵子 / 精子 / 室温保存 / 真空乾燥 / トレハロース |
Outline of Annual Research Achievements |
生殖機能細胞をエネルギーフリーで保存できる新規な真空乾燥・室温保存法を開発することを目的として、本研究を実施した。 昨年度の実験において、マウスの2-細胞期胚より桑実期胚の方が、室温保存(常圧下での液状保存)に対して耐性があり、PB1, M2, Tris-EGTA(TE)及びmCZB-hepesに浸漬した桑実期胚は、室温保存48時間でも生存し、胚盤胞に発生し得ることがわかった。また、同様の保存液に0.1Mトレハロースを加えた場合、48時間の室温保存後の生存性はほとんど変わらなかった。 そこで、今年度は、トレハロースの桑実期胚の室温保存における保護効果を確認するために、0.1M, 0.5M, 1.0M及び1.5Mトレハロースを含むPB1, M2,TE及びmCZB-hepesを用いて桑実期胚の常圧下での室温液状保存及び真空乾燥・室温保存を行った。また、同様の保存液を用いてマウスES細胞(E14TG2a)の室温保存も試みた。48時間、室温保存した胚は、室温下にてPB1, M2, TE及びmCZB-hepesを加えることにより保存液を希釈した後、洗浄し、24時間の培養を行うことにより、胚盤胞への発生率を確認した。また、ES細胞は、48時間の室温保存後、ES培養液にて1週間培養することにより、増殖能及びコロニー形成能を確認した。 その結果、各濃度のトレハロースを含む保存液で、桑実期胚を室温下で液状保存した場合、いずれの濃度でも生存胚は認められた(10~30%)が、トレハロースの濃度による差は認められなった。一方、各濃度のトレハロースを含む保存液を用いて桑実期胚を真空乾燥後、室温保存したところ、生存胚を得ることができなかった。また、ES細胞を48時間、室温液状保存した後、ES培養液にて培養したところ、増殖し、コロニー形成が認められたが、真空乾燥後では、生存している細胞は認められなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
真空乾燥/室温保存は、マウス精子では1年以上の保存でも正常な受精能及び発生能が保持できることが確認されている。しかし、初期胚では、比較的発生の進んだ桑実期胚で室温液状保存した場合、48時間以内であれば、正常な胚が得られるが、真空・乾燥/室温保存した場合は、まったく生存胚は得られなかった。このことは、精子とは異なり、初期胚の場合、真空乾燥時における細胞内脱水などが細胞膜や細胞質へ何らかの障害を与えていることが示唆される。真空乾燥/室温保存を初期胚に適用するためには、いかに障害を与えずに、脱水させ、細胞膜を含む細胞内の正常性を維持した状態で保存するか、その条件を明らかにすることが必要である。このことから、水分子と置換が可能なトレハロース等の室温保存における有効性を更に追及することが極めて重要であると思われる。また、保存中の酸化による影響を防ぐために酸化抑制剤の効果を確認する必要もある。従って、予想以上に初期胚の真空乾燥は、困難であることがわかったため、当初、予定していた実験計画を若干変更し、初期胚の真空乾燥/室温保存におけるトレハロース等の有効性を確認するするための保存条件を検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
マウス初期胚、特に桑実期胚についてトレハロースを含む保存液の最適な濃度及び真空乾燥・室温保存の条件を検討する。 エピカテキン、アスコルビン酸、ウシ血清アルブミン及びデキストラン40等とトレハロースを含む保存液に胚を浸漬した後、十分な脱水後、真空乾燥を行い、復水後の胚の生存性を確認する。その際、スクロースなどの糖による胚の前処理(脱水処理)についても検討する。真空乾燥/室温保存後に生存胚が得られた場合は、培養により胚盤胞への発生を確認すると共に、胚をレシピエントマウスの子宮内に移植し、胎児への発生性を確認する。更に、最適な真空乾燥の条件のもとで、ES細胞についても試み、室温保存後の生存性を確認する。ES細胞の生存が確認できた場合は、培養を行い、他系統の胚盤胞へES細胞を顕微注入後、レシピエントマウスの子宮に移植することによりキメラマウスの作製を試みる。
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Causes of Carryover |
物品費として、主に動物代(マウス)、マイクロチューブ、チップ、カルチャーディッシュ、保存用チューブ、試薬(トレハロース、Tris-EDTA等)及び培養液等( PB1、M2, mCZB-hepes)等に支出した。また、動物実験施設の移転のための準備や引っ越しの為、実験が十分できない時期があった。その為、次年度の使用額が生じてしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品費は、動物代、マイクロチューブ、チップ、カルチャーディッシュ、試薬(トレハロース、カテキン、その他抗酸化剤、ミネラルオイル)、培養液(PB1, M2, mCAB-hepes, ES培養液)などの購入に充てる。また、得られた研究成果は、日本実験動物学会、日本繁殖生物学会及び国際学会(14th Transgenic Technology Meeting)などに発表する予定であるが、その旅費に充てる。
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[Journal Article] Omega 3 Polyunsaturated Fatty Acids Suppress the Development of Aortic Aneurysms Through the Inhibition of Macrophage-Mediated Inflammation.2015
Author(s)
Takuma Yoshihara, Kazunori Shimada, Kosuke Fukao, Eiryu Sai, Yayoi Sato-Okabayashi, Rie Matsumori, Tomoyuki Shiozawa, Hamad Alshahi, Tetsuro Miyazaki, Norihiro Tada, Hiroyuki Daida
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Journal Title
Circ J
Volume: 79
Pages: 1470-1478
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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