2015 Fiscal Year Research-status Report
肝細胞増殖因子HGFの新規作用:癌細胞に対する不可逆的な増殖抑制作用の分子機構
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26440048
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
田中 利明 東京工業大学, 生命理工学研究科, 助教 (40263446)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 秀治 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), その他 (90447318)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 肝細胞増殖因子 / HepG2細胞 / 不可逆的増殖停止 / 細胞分化 / 細胞老化 / がん |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度では予定に先行して遺伝子発現マイクロアレイ解析を実施したことから、平成27年度は当初の計画に戻り、HGFによるHepG2細胞の不可逆的増殖停止が、細胞分化誘導 and/or 細胞老化誘導である可能性について検討を行った。 (i) 細胞分化についての検討: 分化した肝細胞マーカーであるhAlbumin、CYP7A1、HNF4α (Hepatic Nuclear Factor) の発現をRT-PCRで検討した結果、hAlbuminではHGFによる発現量変化は認められず、HNF4αは、HGF刺激96時間での発現量がHGF無刺激(0時間)よりも減少していた。一方、CYP7A1では、HGF刺激した際の発現量が無刺激での発現量よりも上昇する傾向が認められたことから、肝がん細胞HepG2細胞は、HGF刺激により細胞分化状態が変化している可能性も考えられた。 (ii) 細胞老化についての検討:代表的な老化マーカーであるSenescence Associated-b-Gal (SA-β-gal) について免疫組織染色法による検討を行った結果、HGF刺激したHepG2細胞の一部分が青く染まり、染色されたHepG2細胞割合は、HGFで72時間刺激した細胞及びHGFを入れ続けたHepG2細胞において高い傾向が認められた。しかし、HGF刺激のないHepG2細胞においてもコロニー中央部分が弱く染色され、また、HGFによる増殖停止誘導を阻害したPD98059処理後のHepG2細胞についても一部の細胞が染色された。これらのことから老化マーカーとしてSA-β-galを使用する為には、さらに条件検討が必要であると考えられた。一方、別の老化マーカーp14ARFについて、RT-PCRおよびWestern blottingにより調べた結果、HGF刺激96時間で発現が上昇していた。また、別の老化マーカーp16INK4aについても刺激後24時間以降で発現上昇していた。これらの結果より、HGF刺激によりHepG2細胞の老化が進み、不可逆的増殖停止に至る可能性が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H27年度以降の計画としていた遺伝子発現マイクロアレイ実験を、研究効率を優先して平成26年度において実施したため、H26年度に予定の細胞分化、細胞老化などの検討がやや遅れていたが、平成27年度において当初の計画に戻って研究実施項目に取り組み、予定の研究項目について結果を得た。これらのことから、H26年度とH27年度の予定が逆になったものの、おおむね順調に進展していると言える。なお、雇用している研究補助員の時間的制限から、優先的に行うべき実験から実施し、後に結果をまとめる方針にて研究を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
H26年度において実施した細胞周期制御因子と遺伝子発現マイクロアレイ解析の結果、およびH27年度において見出したHGFによる不可逆的増殖停止と細胞老化との関係にもとづき、以下の実験を行う。①細胞周期制御因子の解析から得たp57KIP2 はインプリンティング遺伝子であり、その発現はゲノムのエピジェネティックな変化により制御されている。このことから、p57の発現変化と不可逆的増殖停止の間には何らかの相関が考えられる。そのため、p57発現の詳細な解析を実施すると共に、不可逆的増殖停止との関係を過剰発現およびノックダウン実験により検証する。②H26年度に実施の遺伝子発現マイクロアレイ解析から得た、不可逆的増殖停止に係わる可能性がある候補遺伝子群について、HepG2細胞における過剰発現またはノックダウン実験を行い、不可逆的増殖停止との関係に迫る。③H27年度に得た細胞老化との関係については、代表的な細胞老化マーカーであるSA-β-galでは否定的結果が出ていることから、さらに慎重かつ詳細な検討を行うべきと考えられる。
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Causes of Carryover |
H26年度より新たな研究室に異動したが、異動先研究室では研究指導を行う学生が居ないことから、H27年度の研究計画の速やかな遂行のために研究補助員を雇用した。H27年度末における研究補助員の残業費と研究実施に必要となる消耗品費を残していたが、雇用していた研究補助員の3月期における勤務が実質なくなったことからその差額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H28年度においては、所属大学の大学改革に伴い再び研究室を異動する必要が生じており、これに伴って研究遂行に必要となる冷凍庫など物品を新たに購入せねばならないことが予想されている。当該助成金はこれらの物品購入に充当される予定である。
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Research Products
(17 results)