2016 Fiscal Year Research-status Report
Recognition system in pollen-pistil interaction in Brassicaseae
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26440145
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岩野 恵 大阪大学, 産業科学研究所, 特任助教(常勤) (50160130)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | アブラナ科植物 / 受粉過程 / カルシウム / 花粉管ガイダンス / 発光イメージング / ゼニゴケ |
Outline of Annual Research Achievements |
被子植物の生殖は、花粉の柱頭への付着(受粉過程)ではじまり、花粉管の胚珠への誘引を経て、受精が成立する。これら一連の過程では、雌蕊と花粉との細胞間コミュニケーションにより適切な花粉(和合花粉)が選抜される。申請者はこれまでに、この細胞間コミュニケーションに、Ca2+や活性酸素が関与することを示し、和合花粉の発芽・伸長を誘導する雌蕊側のCa2+輸送体を同定してきた。本申請では、遺伝学的・分子生物学的・生化学的・細胞生物学的解析を包括的に行なうことにより、和合受粉から受精に至る過程での花粉・雌蕊細胞内におけるCa2+を介した情報伝達系の実体を明らかにすることを目的とする。これまで研究代表者は、自家受粉時のSP11とSRKの相互作用の下流では、雌蕊細胞でグルタミン酸受容体型チャネルを介したCa2+濃度上昇がおき、その結果自己花粉の発芽が抑制されることを明らかにし、一方他家受粉時には、乳頭細胞から花粉へのautoinhibited Ca2+ ATPaseを介したCa2+流出により非自己花粉(管)の発芽・伸長が促進されることを明らかにした。さらに胚嚢助細胞と花粉管のCa2+イメージング解析から、花粉管の胚嚢への誘引時にも、雌蕊花粉の双方でCa2+を介したシグナル伝達系が存在することを明らかにした。しかしシロイヌナズナでは遺伝子重複が多いため、各種Ca2+チャネルの完全な遺伝子破壊株を作製することが困難であり、Ca2+イメージング解析などの障害となっていた。そこで本研究では、遺伝子重複が少ないが高等植物の生理機能システムと同様のシステムを有すると考えられるゼニゴケMarchantia polymorphaを材料としてCa2+チャネルの遺伝子破壊株の作製を行うとともに、光障害の少ない発光イメージング系を立ち上げて、新たなCa2+チャネルの機能解析のシステムを構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)受粉過程で機能するCa2+輸送体としてグルタミン酸受容体型チャネル(GLR)が同定されたが、その多重変異体についてはCa2+イメージングによる差は認められなかった。シロイヌナズナのGLRファミリーには21の分子種が存在する。従ってGLRの機能解析には、遺伝子重複の少ない植物種を使用する必要があると考えた。そこでGLRと機械ストレス応答型 Ca2+チャネル(MCA)の分子種について、シロイヌナズナと相同な遺伝子をMarchantia polymorphaで探索した。その結果、それぞれ1分子種の遺伝子が見出され、その破壊株の解析を行った。遺伝子破壊株の表現型解析では、GLRについては形態学的な顕著な差は見られなかったが、カルシウム動態には差が見られた。一方MCA変異株では植物のカルシウム濃度との関連が示唆され、成長抑制などの表現型が見られた。現在、GUSレポーターアッセイ、GFPレポーターアッセイ、過剰発現体の解析などにより詳細な解析を進めている。 2)蛍光Ca2+イメージイングシステムを用いた花粉管ガイダンスの解析では、光毒性のために花粉管の伸長が阻害されたり、受精の効率が低くなった。これにより、さらに詳細な解析を行うためには、新たなイメージング系の構築が必要であると考えられた。 以上の結果から当初予定していた計画とは異なり、M. polymorphaを用いた解析をシロイヌナズナと同時に行うこととなったが、その結果Ca2+チャネルについては想定していなかった機能解析を進めることができ、計画は概ね順調に進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者が所属する研究室では、発光タンパク質と蛍光タンパク質の融合型タンパク質をベースとしたCa2+センサータンパク質を開発している。一般に発光イメージングは非常に暗く、リアルタイムイメージングは難しいとされてきたが、昨年度開発された新規発光・蛍光Ca2+センサータンパク質は、非常に明るく、光毒性がなく、葉緑体などの自家蛍光も励起しないことから植物のカルシウムイメージングに適していると考えられた。そこで、今後はこれらのセンサータンパク質を利用して植物の生殖過程を励起光なしで可視化するシステムを構築することが重要であると考えている。
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Causes of Carryover |
当初の計画では、蛍光タンパク質を用いたイメージングにより、植物の細胞内部やオルガネラのカルシウムダイナミクスを明らかにすることを考えていた。しかし、細胞への光障害が大きいことが明らかになり、計画の見直しが必要となった。また材料としてはシロイヌナズナの使用を予定していたが、遺伝子重複のため解析が困難であることから、遺伝子重複の少ない植物種での研究が必要となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究代表者が所属する研究室では、発光タンパク質と蛍光タンパク質の融合型タンパク質をベースとしたCa2+センサータンパク質を開発している。そこで、今年度はこれらの発光バイオセンサータンパク質の遺伝子を導入した植物を利用して植物の生殖過程を励起光なしで可視化するシステムの構築を目指す。カルシウム輸送体の解析のためには、シロイヌナズナの他に、遺伝子重複の少ないMarchantia polymorpha(ゼニゴケ)を利用して解析を進める予定である。そのために、当該助成金を使用する状況が生じた。
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Research Products
(4 results)