2015 Fiscal Year Research-status Report
プラナリア生殖様式転換機構の概年リズムを司る因子を探る
Project/Area Number |
26440180
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
松本 緑 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (00211574)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | プラナリア / 無性生殖 / 有性生殖 / 概年リズム |
Outline of Annual Research Achievements |
自然界には季節変化に応じて、無性生殖と有性生殖を転換する生物が多く存在する。申請者は、扁形動物プラナリアを用いて無性生殖個体を実験的に有性生殖個体に転換させる系を確立し、個体における有性生殖転換能および生殖細胞分化能について研究を進めてきた。 本課題では、環境と個体の関係に着目し、自然界で起こる生殖様式転換現象の解明を目指して、野外個体の定点観察により生殖様式の周年変化を観察し、生殖様式を転換する個体がいることを確認した。この個体を切断と再生を繰り返し無性生殖により殖やし、系統として確立した。この系統を用いて実験室条件下で日周期と温度が環境要因となるか否かを明らかにすることを目指した。 昨年度から本年度にかけては、沖縄で1年を通して定期的に採集し、実験室内の一定環境下で飼育したのちも生殖様式の転換が観察される系統(転換系統)を確立した。転換系統では、自然界でも実験室内の一定環境下でも秋期から春期にかけて有性生殖、夏期が無性生殖に転換することが明らかとなった。 本年度は、転換系統を継続的に飼育し、生殖様式の転換が継続的におこることを確認した。さらに継続的に確認できた系統に対して、光周期と温度周期を変化させた条件下での生殖様式転換の観察をおこなった。夏期の無性生殖をおこなっている転換系統個体に対して有性生殖になる条件である明期10時間、暗期14時間、15℃(低温)の冬条件で飼育した。コントロール実験としては、明期一定、20℃にて飼育をおこない観察した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
秋期から春期にかけて有性生殖、夏期が無性生殖に転換する転換系統を構築できたので、本年度は、転換系統を継続的に飼育し、生殖様式の転換が継続されることを確認し、2サイクルまでは安定に概年リズムを継続することが観察された。さらに、実験室内で2回の生殖様式転換サイクルを行った個体を用いて、リズムを光周期と温度周期を変化させた条件下での生殖様式転換の観察をおこなった。夏期の無性生殖をおこなっている転換系統個体に対して有性生殖になる条件である明期10時間、暗期14時間、15℃(低温)の冬条件で飼育した。コントロール実験としては、明期一定、20℃にて飼育をおこない観察した。短日処理では、コントロールに比べて早い有性生殖への転換が観察された。しかし、コントロール個体で実験室内での3回目の生殖様式転換サイクルを観察することができたが、その後は無性生殖に戻り、生殖様式転換の概年リズムは見られなくなった。そのため、プラナリア生殖様式転換の概年リズムの恒常条件下での維持は難しいことがわかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の成果により、プラナリア生殖様式転換の概年リズムの恒常条件下での長期間の維持は難しいことがわかった。また、転換系統の個体の長期間維持も困難であることがわかった。平成28年度は新たに自然界より生殖様式転換系統の採集を行い、速やかに、光周期と温度周期を変化させた条件下で飼育し、その影響を観察する。
|
Causes of Carryover |
生殖様式転換系統を長期維持することが困難であることがわかり、再度生殖様式転換系統を確立するために沖縄でのプラナリア採集計画を立てているため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
プラナリア採集のための東京~沖縄の旅費を計画している。
|
Research Products
(8 results)