2014 Fiscal Year Research-status Report
染色体安定性を保障するセントロメア形成に必須なヒストン修飾機構
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26440190
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
堀 哲也 国立遺伝学研究所, 分子遺伝研究系, 助教 (70550078)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | セントロメア / ヒストン修飾 / エピジェネティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究から、各種ヒストン修飾抗体を利用した網羅的ChIP-seq解析を行い、セントロメア特有なヒストンCENP-Aと極めて良く似たピークパターンを示す複数のヒストン修飾を見いだしている。平成26年度では、そのうちの一つの修飾「ヒストンH4の20番目のLys残基のモノメチル化(H4K20me1)」に注目して解析を行った。生化学的解析の結果、細胞周期のG1期初期にCENP-Aがクロマチンに取り込まれた後、CENP-Aヌクレオソーム内のH4K20が速やかにモノメチル化されることが明らかになった。このH4K20me1修飾がセントロメア形成にどのように関わるかを解析するために、セントロメア領域のH4K20me1修飾を特異的に除去できる実験法を開発した。まず、H4K20me1修飾の脱メチル化酵素(PHF8)とセントロメアタンパク質CENP-Uとの融合タンパク質を発現させ、セントロメア領域へ特異的に局在させた。その結果、セントロメア領域のH4K20me1修飾を特異的になくすことに成功した。セントロメア領域からH4K20me1修飾を除去した細胞では、セントロメア上に構築される構造体(キネトコア)タンパク質であるCENP-HやCENP-Tの局在が阻害されることが分かった。その結果、セントロメアの機能は失われ、染色体分配の異常が多数観察された。この実験からH4K20me1修飾は、機能的なセントロメア形成に必須であると結論できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究期間中に明らかにする点として「セントロメア領域に特有なヒストン修飾が導入される意義」の解明を挙げた。予備的な実験から見いだしていた「セントロメア領域に特有な複数のヒストン修飾」の中の一つ「H4K20me1修飾」について、平成26年度において生化学的および細胞生物学的な解析手法により、セントロメア形成における生物学的な意義を明らかにし、モデルとして報告した。これらの成果は国際的にも評価され、掲載誌の表紙に選ばれた。また、研究実施計画で平成26年度に予定していたヒストン修飾に関連する因子の遺伝子破壊細胞株の樹立に関しても進め、概ね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度に樹立を行ったヒストン修飾関連因子の遺伝子破壊株を用いて、セントロメア機能に与える影響を解析する。さらに、ヒストン修飾の異所的な導入実験も行うことで、セントロメア領域におけるヒストン修飾の生物学的な意義を調べる。以下、実験項目ごとに記載する。 (1)ヒストン修飾の導入に関連する因子の遺伝子破壊株の解析 ヒストン修飾導入に関連する因子の遺伝子破壊株を用いて、遺伝子欠損によりセントロメア領域のヒストン修飾パターンが変化するかどうかを、クロマチン免疫沈降と次世代型シーケンサーによる解析(ChIP-Seq法)を行う。ChIP-Seq法における次世代型シーケンサーによる解析は、国立遺伝学研究所の藤山秋佐夫教授、豊田敦特任准教授の協力のもと行い、得られた大量データの情報解析は、国立遺伝学研究所の池尾一穂准教授の協力を仰ぐ。さらにこれら遺伝子破壊株について、染色体分配異常や各種セントロメアタンパク質の局在異常を解析し、セントロメア機能におけるヒストン修飾の意義を調べる。 (2)ヒストン修飾の異所的導入・除去による解析 以下の2つの手法を用いる。1つ目は、修飾酵素あるいは脱修飾酵素の活性領域を任意のセントロメアタンパク質と融合し細胞内で発現させ、標的とするヒストン修飾をセントロメア領域に特異的に導入するか、あるいは除去を行い、ヒストン修飾状態の変化がセントロメア機能に与える影響を解析する。2つ目の方法は、LacO-LacIシステムを利用して非セントロメア領域へヒストン修飾関連酵素を異所局在化させ、そのヒストン修飾がセントロメア形成に関与するかどうかを解析する。
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Causes of Carryover |
実施を予定していたヒストン修飾に関連する因子の生化学的な同定に変えて、予備的な実験から見いだしていた「セントロメア領域に特有な複数のヒストン修飾」の中の一つである「H4K20me1修飾」の生物学的な意義の解明に研究の重点を変更した。その結果、分子生物学実験試薬、生化学・細胞生物学実験試薬、血清、培地、一般試薬、フラスコ・ピペット類について新規に購入せずに研究遂行ができた。また、ヒストン修飾に関連する因子の生化学的な同定に関する共同研究の研究打ち合わせ旅費も同様の理由により使用しなかった。以上の理由により次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26年度に樹立を行ったヒストン修飾関連因子の遺伝子破壊株を用いて、遺伝子欠損によりセントロメア領域のヒストン修飾パターンが変化するかどうかを、クロマチン免疫沈降と次世代型シーケンサーによる解析(ChIP-Seq法)を当初計画よりも規模を拡大して行う計画である。この際、クロマチン免疫沈降法における生化学実験で使用するヒストン修飾抗体、免疫沈降ビーズおよび次世代型シーケンサーに供するサンプル調整に必要な各種分子生物学実験試薬の購入に使用する計画である。
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Remarks |
Hori et al. Developmental Cell, 2014の成果は、国際的に高く評価され掲載誌の表紙に取り上げられた。また、Nature Rev.MCB誌にResearch Highlightsとしても取り上げられた。
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] Histone H4 Lys 20 Monomethylation of the CENP-A Nucleosome Is Essential for Kinetochore Assembly.2014
Author(s)
Hori T, Shang W-H, Toyoda A, Misu S, Monma N, Ikeo K, Molina O, Vargiu G, Fujiyama A, Kimura H, Earnshaw William C, Fukagawa T
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Journal Title
Developmental Cell
Volume: 29
Pages: 740-749
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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