2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26440209
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
寺井 洋平 総合研究大学院大学, その他の研究科, 助教 (30432016)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤村 衡至 新潟大学, 自然科学系, 助教 (90722140)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 種分化 / 生態適応 / 視覚 / 配偶者選択 / シクリッド / アノール / ノトセニア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では生態適応による種分化の機構がどの程度一般性があるか、アノールトカゲの森林内部への視覚の適応と、南極の氷魚の氷棚の下への視覚の適応を視物質の測定により明らかにする。またシクリッドでは視覚遺伝子変異体を作製し、その遺伝子が生殖的隔離の責任遺伝子であるか明らかにする。これらの研究により、生態適応による種分化機構の生物多様性の創出における一般性を明らかにすることを本研究の目的としている。 平成27年度、アノールについてはキューバの森林内部に生息する種の2つの系統で並行的の起こったLWSのアミノ酸置換の機能解析を行った。開けた場所に生息するAnolis sagreiと森林内部に生息するA. allogusのLWS視物質を再構築し、吸収波長測定を行った。LWS視物質は不安定なため測定が困難であるが、A. sagrei配列由来のLWS視物質については測定に成功し、約560 nmに最大吸収を持っていた。平成28年度には森林内部の種の測定を行い、データをまとめて論文の作成を始める予定である。 南極に生息する氷魚については、氷の棚の下に生息する種と生息しない種からアノールと同様の手法でオプシンタンパク質の産生を行った。その結果、氷の棚の下には生息しない種において魚類のRH1視物質としては大きく短波長シフトした最大吸収(486 nm)を持つことが明らかになった。平成28年度には氷の棚の下には生息する種のRH1視物質の測定を行い、データをまとめて論文の作成を始める予定である。 シクリッドについては2種間のゲノム解析から婚姻色の形成に関与すると予想される種間で分化した遺伝子を特定した。この遺伝子も変異体作成の候補としてオプシンとともにCRISPR-Cas9系の変異体作成を進めている。インジェクションのためのシクリッドの飼育と採卵の準備が整いつつある。平成28年度には変異体作製を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は順調に進展していると考えている。その理由を以下に挙げる。 アノールについては、LWS視物質の測定を開けた明るい場所に生息する種で成功し、森林内部に生息する種に関してもデータ解析には用いることができないが、視物質の存在を測定により確認できた。LWS視物質は不安定であり、再構築が困難であるが、これまで得られた結果により、産生するタンパク質の量を増加させることにより測定できると予想できている。南極に生息する氷魚についても、氷の棚の下には生息しない種からの視物質の測定を成功している。こちらも氷の棚の下に生息する種の測定が可能である予想が立てられており、順調に測定できると期待している。シクリッドの変異体については、当初の計画では予想できなかった婚姻色形成遺伝子が明らかになったため、視覚遺伝子の変異体と婚姻色形成遺伝子の変異体の両方を作製して、それぞれ配偶者選択の実験を行うことが可能となった。また、当初は予定していなかった種のペア(火山の火口湖に生息)を用いた研究からも重要な視覚遺伝子を明らかにしたため、変異体作製の遺伝子の候補が増えた。インジェクション対象のシクリッドの種は2種ともに順調に継代を行っている。以上のことから、本研究は順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
アノールについては森林内部の種由来の視物質の吸収を測定する実験を行い、この吸収と光環境、喉の色の反射スペクトルを解析することによって、生態適応を介した生殖的隔離の機構を明らかにする予定である。南極に生息する氷魚については、氷の棚の下に生息する種の視物質の吸収測定を行い、氷の下の光環境への適応と近縁種からの遺伝的交流の断絶の過程を解析する予定である。シクリッドの種間の変異体については、平成28年度にオプシンの変異体の作製を行い、変異体が配偶者選択を野生型と同等に行うことができないかどうかを行動実験により示し、オプシン遺伝子の配偶者選択における役割と種分化の機構を明らかにする予定である。また、アノールと氷魚については、平成28年度中に論文の作製を始める予定である。
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Causes of Carryover |
シクリッドの飼育が順調であったため、薬浴用薬品代、濾過槽のろ材、飼育用品の消耗品を節約することができたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
シクリッドの飼育用の、薬浴用薬品代、濾過槽のろ材、飼育用品代、餌代などに使用する。
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Research Products
(10 results)