2014 Fiscal Year Research-status Report
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26440210
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
上井 進也 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (00437500)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 集団分化 / 海藻 / 光周性 / 同所的 / アカモク |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は,冬成熟アカモクと春成熟アカモク集団の遺伝的分化をミトコンドリアハプロタイプに基づき解析するために、佐渡の中でも冬集団と春集団が共存している地域におけるミトコンドリアハプロタイプの月変化の確認、および佐渡全域のハプロタイプの網羅的解析を行った。事前に主なフィールドとしていた地先において、道路工事の影響でアカモク集団が消えてしまい、毎月の採集を行うことができないというトラブルがあったが、複数の地域において、同じ場所に生育する春集団と冬集団のハプロタイプ頻度の比較を行い、明確な違いを確認することができた。核マーカーについては、1マーカーについて解析を終了したが、ミトコンドリアのように明確な遺伝的違いは確認されず、場所によっては対立遺伝子頻度の違いが全く見られない集団も存在した。この結果が、冬集団と春集団の遺伝的交流の結果なのか、マーカーの解像度不足が原因なのか明らかにするためは、ほかの核マーカーの解析が必要である。現在、さらに1マーカーについて解析を進めているが、今後、追加の核マーカーの開発を進め、順次核マーカーを用いた冬集団と春集団の比較を行っていく。また、室内培養実験を通じて冬集団と春集団由来の株に臨界日長の違いが見られることを確認した。この結果から、冬集団と春集団の成熟時期の違いが遺伝的要因によるものであることが強く示唆された。今後、使用する株数を増やすとともに、交配実験により、光周性の遺伝様式を確認し、野外における交雑の影響について確認を進めて行く予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
採集地における道路工事などのトラブルがあったにも関わらず、遺伝的解析において重きを占めるミトコンドリアハプロタイプの解析について大幅な進展がみられ、佐渡沿岸における地理的・季節的変異について全体像を把握することができた。ミトコンドリアハプロタイプの解析については、当初計画より進展していると考えている。また、培養実験においても、冬2株、春1株において臨界日長を明らかにできたため、今後は交配実験による光周性の遺伝パターンの解析に移行することが可能になった。核マーカーの解析については、やや遅れていると言わざるを得ない状況にあるが、開発と並行して、遺伝子型決定を行っていることを考慮すれば、当初計画にそって、概ね順調に進展していると考えることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度は、遺伝的解析については核マーカーの解析を中心に進めて行く。開発済みの核マーカーについて、佐渡沿岸の集団を中心に解析を進めるとともに、新規マーカーの開発を並行して行っていく。培養実験については、冬集団、春集団それぞれに由来する個体間の交配実験と、交配実験で得られた雑種個体の光周性の確認を作業の中心とし、光周性の遺伝パターンについて明らかにすることを目指す。また、新規培養株を確立し、光周性を確認することで、光周性の違いが集団レベルと言えるものか、冬集団・春集団のそれぞれにどの程度の変異が内包されているのかを明らかにし、光周性の違いと集団分化の関連について考察を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
サンプリングにおいて採集地における状況の変化によりサンプリングの一部が不可能になり、謝金(傭船費)が全く発生しなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
場所を変更してサンプリングをやり直す必要があるため、次年度に同様の使途、あるいは申請者自身がサンプリングサイトへ赴くための旅費として使用する計画である。
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