2015 Fiscal Year Research-status Report
北海道に新規侵入したカササギ個体群の由来と定着条件の解明
Project/Area Number |
26440232
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
藤岡 正博 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (70183100)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
早矢仕 有子 札幌大学, 地域共創学群, 教授 (40347729)
玉田 克巳 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 環境研究センター, 研究員 (60442620)
森 さやか 酪農学園大学, 環境共生学類, 准教授 (70623867)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | カササギ / 分布拡大 / 外来生物 / マイクロサテライト / 安定同位体比 |
Outline of Annual Research Achievements |
DNA解析による由来地と創始者数の推定については、課題であったロシアでのサンプル収集が、担当者による現地調査によって大きく進んだ。その他に北海道や九州等で収集されたサンプルを含めて約100個体のマイクロサテライト遺伝子型を新たに決定した。 人為的餌資源の利用実態については、夏までにサンプル収集を終えて集中的に分析した。カササギの卵17個と羽毛57枚、潜在的な餌資源としてペットフード11種類と地上性無脊椎動物75個体などの窒素と炭素の安定同位体比を分析し、餌組成をベイズ推定したところ、カササギは、産卵期の早春で約6割、換羽期である夏でも約4割をペットフードに依存していることが明らかとなった。苫小牧のカササギはペットフードなしには定住できないと考えられ、苫小牧への侵入以前からペットフードなどを利用する習性を身につけていたという当初の仮説を支持する結果が得られた。 分布域のモニタリングについては、地図上をクリックして目撃情報を入力できるウェブサイトの構築により大きく進んだ。地域の新聞に掲載されたこともあり、ウェブ入力以外の電話や電子メールによるものも含めて266件の情報提供があった。これらの情報は地図上で誰でも確認できるようにするとともに、分布拡大予測に貢献できるようにデータベースとして共同研究者間で共有している。 営巣数・個体数の把握については、苫小牧市以外での調査に重点を置き、苫小牧市以外の胆振地方の数か所で10羽以上が定着している一方で、札幌市を含めて他の地域では繁殖成功の事例はあるものの、安定した群れの形成には至っていないことが確認された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DNA解析がやや遅れているが、最終年度の解析により由来地をほぼ確定できる見通しである。安定同位体比分析による餌資源の推定は最終年度を待たずに結論を得ることができた。苫小牧市以外での分布や繁殖の確認は、ウェブサイトの開設やそれが新聞等で取り上げられたことでによって大きく進み、最終年度の分布拡大予測につながる成果が得られた。繁殖数・個体数のモニタリングも継続できている。
|
Strategy for Future Research Activity |
DNA解析については、ロシア等で得たサンプルの分析を進めて由来地を確定する。さらに、原産地での遺伝的多様性と苫小牧市およびその周辺域での遺伝的多様性の比較から有効集団サイズを推定するとともに、景観遺伝学的解析を試みる。 個体数と分布域のモニタリングは引き続き継続する。特に毎年繁殖が確認されている地域において営巣数を確認するとともに、秋冬期の集団ねぐら調査によって個体数の正確な把握に努める。ウェブサイトでの情報と合わせて、分布拡大モデルを構築し、当初計画通り、20年後の道内の分布域を予測する。 ただし、アリー効果については、繁殖成功度の地域間比較で間接的に検証することを想定していたが、繁殖成功度の把握が困難であることや、理論的な難点から、細部を見直す予定である。
|
Causes of Carryover |
カササギの繁殖確認の適期が4月から5月であることから、年度当初の旅費を確保するため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
5月に胆振地方の苫小牧市以外において営巣数をカウントする。
|
Remarks |
森さやか (2015) 苫小牧のカササギはどこから来たのか?日本野鳥の会 苫小牧市部報 あおさぎ 202、北海道新聞 平成27年5月18日付け夕刊「求む!カササギ目撃情報」、北海道新聞 平成27年7月6日付け夕刊「カササギ札幌で繁殖確認」等、市民向けの広報も行なっている。
|
Research Products
(5 results)