2014 Fiscal Year Research-status Report
環境適応能としての移行速度と経済速度に関する生理人類学的検討
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26440266
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
安陪 大治郎 九州産業大学, 健康・スポーツ科学センター, 講師 (10368821)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福岡 義之 同志社大学, スポーツ健康科学部, 教授 (20265028)
堀内 雅弘 山梨県富士山科学研究所, 環境共生部, 室長 (50310115)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 生理人類学 / 環境適応能 / 直立二足歩行 / 人間工学 / 生理的多型性 / 機能的潜在性 / Locomotion / Gait |
Outline of Annual Research Achievements |
傾斜路面における移行速度や経済速度の決定要因に関する仮説モデルとして、逆振り子モデルと動的線形モデルを併用した。着床期の身体重心は逆振り子状態にあるため、遠心力(F)、身体重量(m)、対地速度(v)、脚長(L)にはF=mv2/Lの関係が成立する。この遠心力は重力と等しいので、F= mv2/L =mgの関係が成立する(gは重力加速度)。これをvについて解くとv=√gLとなる。これより速い速度では、遠心力によって自然に脚が地面から離れ、理論的には歩行動作から走動作に移行することを意味している。同様に動的線形仮説から経済速度V=1.428√Lの関係が成立する。実測での被験者は、よく鍛錬された運動選手11名とした。平地、傾斜(±5%)に設定されたトレッドミル上で8歩行速度、および4走行速度における酸素摂取量(VO2)を測定した。VO2は単位距離あたりの酸素消費量(CoT)に換算された。歩行と走行で得られたCoT値を関数近似したところ、経済速度と移行速度は、全ての傾斜において動的線型モデルでは説明できないことが判明した。関数近似の係数を詳細に分析したところ、ゼロ速度時の代謝(standing VO2)が経済速度や移行速度に大きな影響を及ぼしており、特に低速域での影響は高速域に比べて相対的に大きいこと、傾斜差があること等が明らかにされた。これらの結果から、傾斜による影響を考慮しても、standing VO2の取り扱いによって、経済速度の算出は概ね20%変動することが示された。一方、移行速度はstanding VO2による有意な影響が平地と下りで観察されたが、その影響はわずかに3%未満であった。また、走行中のCoTは9.4km/h以上でstanding VO2の影響が消失した。経済速度と移行速度には有意な相関関係は見られず、両者は個体内で独立した変数であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
移行速度前後での筋電図解析について、磁界電流の発生によって一時的に実験の中断を余儀なくされた。新指針による倫理委員会承認が済んだら再開予定である。また、低酸素+傾斜条件について、分担箇所や設定酸素濃度などの条件を分担研究者と協議しているところである。
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Causes of Carryover |
磁界電力発生による筋電図測定を途中中断したため、被験者謝金に余剰金が発生したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記測定の継続を予定しているが、低酸素実験において筋電図計測を行った方が、より学術的価値が高いと思われる。共同研究者と調整中である。
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