2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26450009
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
清水 顕史 滋賀県立大学, 環境科学部, 准教授 (40409082)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山崎 将紀 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (00432550)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 環境ストレス / 遺伝育種学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度も昨年に続き、日本のイネ112品種を滋賀県立大学内の貧栄養水田および低リン水田で栽培し、穂数や一穂粒数などの収量関連形質の全ゲノム関連解析(GWAS)を行った。穂数や一穂粒数のGWASで検出された有意な染色体領域の中には、昨年度も有意差の観られた再現性の高い領域が見つかった。また、H26年度の貧栄養水田の穂数で品種間差の観られたコシヒカリとユーカラの組換え自殖系統(RILs)95種類を用いて、H27年度も貧栄養水田で栽培し穂数と到穂日数を調査した。貧栄養でも穂数の多いユーカラは極早生で、コシヒカリよりも24日出穂が早い。RILsでも到穂日数と穂数は有意な負の相関-0.70を示したが、到穂日数が両親の中間型の系統でも穂数の多い系統も分離した。平成28年度に得られる遺伝子型データを用いて穂数および到穂日数のQTL解析を行うことで、貧栄養水田での収量増加に関わる遺伝領域を明らかにできるであろう。 また、開発した48穴プレートを用いた多検体用の根分泌液回収システムを利用した、フィチン態リンの無機化能力についてRILsによる検証を行った。コシヒカリ×陸羽132号のRILs96種およびコシヒカリ×亀の尾4号のRILs96種のそれぞれについて形質調査を行い、SNPアレイによって得た300座以上の遺伝子型データによるQTL解析を行ったところ、両集団ともに染色体7に有意な遺伝領域が検出された。日本イネ集団112種を用いたGWASで検出されていた染色体12の領域にはQTLは検出されなかったため、H28年度にはQTL結果の再現性の確認と、調査形質の追加を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画通りに、昨年に続き学内の貧栄養水田を用いたイネ112品種の栽培と形質調査および全ゲノム関連解析を行うことができた。穂数や一穂粒数に関する全ゲノム関連解析で見られた有意なマーカーには、昨年度も検出された再現性の高い有望なものも見出すことができた。また、コシヒカリ×ユーカラのRILsを貧栄養水田で栽培し、穂数および到穂日数を調査したところ形質の分離が観られており、遺伝子型データを入手次第QTL解析を行うことで、貧栄養のイネ育種に貢献しうる染色体領域を見出すことができるだろう。 昨年度は、水耕栽培で調査できる栄養ストレス耐性形質として、48穴プレートを用いた多検体用の根分泌液回収システムを開発し、フィチン態リンの無機化能の全ゲノム関連解析を行った。平成27年度はコシヒカリ×陸羽132号およびコシヒカリ×亀の尾4号のRILsを用いて、多検体根分泌回収システムによるフィチン態リン無機化能を調査し、QTL解析を行った。両集団ともに染色体7に有意な遺伝子座領域を検出することができた。ただし、GWASとQTL解析で検出された領域が異なったため、H28年度は形質を追加し結果の検証を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
H26、27年度と同様に、貧栄養水田および低リン水田で日本のイネ112品種を栽培し、収量関連形質および全ゲノム関連解析により検出される有意なDNAマーカーについての年次反復結果を得る。H28年度は特にICP-MSを用いた多元素解析データを入手し解析する。また、コシヒカリ×ユーカラのRILsを用いた貧栄養水田の栽培試験もH27度と同様に行い、穂数と到穂日数についての年次反復データおよび一穂粒数を調査し、それらのQTL解析を行う。 また、コシヒカリ×陸羽132号およびコシヒカリ×亀の尾4号のRILsを用いた低リン誘導性のフィチン態リン無機化能に関するQTL解析を、昨年度に引き続き行う。多検体用根分泌液回収システムを用いて酸性ホスファターゼ活性についても調査し、QTL解析結果の再現性を確認する。
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Causes of Carryover |
複数のRILsのジェノタイピングに必要なDNAマーカー分析用試薬に関する支出は、分担者の協力により大幅に削減することができたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
28年度のその他の経費(DNAマーカー分析用の試薬およびICP-MSによる無機分析に必要な試薬)として使用する。
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