2014 Fiscal Year Research-status Report
エキソ型α-アミラーゼの基質認識と糖転移反応の分子基盤
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26450100
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
炭谷 順一 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 准教授 (10264813)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西村 重徳 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 助教 (90244665)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アミラーゼ / マルトトリオース生成アミラーゼ / 糖転移反応 / 配糖体 / マルトトリオース |
Outline of Annual Research Achievements |
本酵素の詳細な酵素化学的性質を解明した。各種パラメータから本酵素はG3を過分解する活性が極めて低いG3生成アミラーゼであることが示された。また,アミロースに対する還元糖生成と重合度の変化の解析,シクロデキストリンに対する反応性から,本酵素が非還元末端に対する親和性が高いものの,非還元末端が少ない反応初期にはエンド型活性を示すことで効率よくデンプンを分解することが明らかとなった。 また,本酵素のX線結晶解析を行い,アポ型で1.3 Å,G3複合体で1.7 Åの解像度で立体構造を決定した。解析の結果,サブサイト–3に位置する非還元末端GlcのO4と本酵素のN134およびQ192の側鎖が水素結合を形成していることが示された。そこでN134A/Q192Aを作製し,デンプンを作用させたところ,G3特異的生成能は失われ,通常のエンド型酵素と同様G2~G4が生成した。以上のことから,G3特異性を規定しているのはN134とQ192であることが明らかとなった。 さらに,サブサイトプラス側を構成すると考えられる16アミノ酸に対して合計172種類の変異酵素を作製した。Glc存在下でデンプンを基質として反応させることで,糖転移反応産物であるG4と加水分解産物であるG3の生成比を野生型酵素と比較した。結果,L191R,R223K,N317Qにおいて野生型に対してG4/G3生成比が12.5,11.5,11.8倍上昇した。さらにL191R/N317Tは22.2倍にも上昇することがわかった。 これら作製した多数の変異酵素を用いて,グリセロール,カフェ酸,フェルラ酸,ケルセチン,アスコルビン酸に対して配糖化活性を評価した。その結果,グリセロールについては野生型酵素で約 30%の収率でG3グリセロールを合成できることがわかった。他のアグリコンについても変異型酵素を用いることで配糖化率を上昇できることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画で平成26年度に予定していた(1)G3Amyの詳細な酵素化学的性質の解明,(2)G3AmyにおけるCBM欠損酵素の作製と基質並びに生成物特異性の解析,(3)G3Amy単独及び基質複合体の高解像度X線結晶解析については終了することができ,当初の予定通り初年度に計画していた実験課題をほぼ全て完了することができた。 また平成27年度以降に予定していた(5)G3AmyのG3特異性に関与するアミノ酸の同定を立体構造解析とその結果に基づく変異酵素の作製と解析によって行うことができた。また(6)G3Amyの糖転移活性に関わるアミノ酸の同定と糖転移活性が増大した変異酵素の取得においても,立体構造解析で得られた結果を基に変異導入部位を抽出し,それらの部位に対して網羅的な変異酵素を作製しスクリーニングすることで糖転移反応が増大した数種類の変異酵素を獲得することができた。それらの変異酵素を用い,グリセロール,カフェ酸,フェルラ酸,アスコルビン酸などのアグリコンに対して配糖化を試み,それぞれのアグリコンに対して反応性の高い変異酵素を選択することができた。 さらに(7)G3Amyの糖受容体選択性に関与するアミノ酸の同定と糖受容体選択性の変換についても,(6)の実験結果から数種のアミノ酸が同定されており,これからさらに詳細な解析を行うことで,目的の配糖体に応じた変異酵素を設計可能となることが期待される。また,(8)特異な生理活性を有する配糖体合成酵素の創成についても変異酵素の網羅的な解析によってこれまで最適であると考えられる変異酵素を抽出している。 このように初年度で当初予定していた予定を大幅に前倒しして研究を進めることができた。この理由の1つとして,本酵素の結晶化と立体構造解析が非常にスムーズに進んだことが挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度において本酵素の詳細な性質と立体構造解析に留まらず,変異酵素の解析によって本酵素の特性であるG3特異性や糖転移反応に関与するアミノ酸残基を同定することができた。その結果,糖転移活性を上昇させることが可能となり,それら変異酵素を用いて数種のアグリコンに対して配糖体を合成することも達成した。しかし高効率なG3配糖体化酵素を創製するためには,(1) 各種変異酵素を用いた糖転移反応と加水分解反応の定量的解析,(2) 糖転移反応のpH依存性の解析,(3) 合成した配糖体の単離精製と構造解析,(4) カルボキシ基への配糖化の確認とその最適化,(5) さらなる配糖化効率の上昇,の5つの課題が残されている。 これまでの研究では各種変異酵素の中から最も糖転移産物が多い酵素をスクリーニングするために大まかな解析を行うに留まっており,高効率配糖体合成酵素を創製するためには反応の最適化と定量的解析が不可欠となる。また,研究の過程で,糖転移反応と加水分解反応のバランスがpHに依存すること,各種変異酵素によってそのpH依存性が変化することがわかってきた。この点についても詳細に解析することが効率的な糖転移反応を行うことにつながると考えられる。 また,フェルラ酸配糖体合成の過程で,生成した配糖体が複数種あることが判明した。フェルラ酸は水酸基が1つしかないため,生成する配糖体は1種類であるはずであった。解析から付加したG3の過分解の可能性は否定されたため,配糖化部位がカルボキシ基にも及んでいる可能性が強く示唆された。カルボキシ基に糖転移することが可能となれば,配糖化できる化合物の種類がさらに増えることになり,本酵素の有用性がさらに高まる。水酸基を含まずカルボキシ基を有する化合物の配糖体合成を試みたり,合成された配糖体の構造を解析したりすることで,これらの点について明らかにしていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
差額が生じた理由は物品費をほとんど使わなかったことによる。これは既に保持している試薬等で今年度の実験が賄えたことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は作製した多数の変異酵素を用いた定量的解析を行う必要があるので,酵素精製および反応産物分析のために多量の研究試薬および精製用カラム等が必要となり,それらに使用していきたいと考えている。
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Research Products
(6 results)