2015 Fiscal Year Research-status Report
アトピー性皮膚炎増悪化予防に資する脂肪酸素材の微生物変換法と酵素法による生産
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26450113
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Research Institution | Osaka Municipal Technical Research Institute |
Principal Investigator |
永尾 寿浩 地方独立行政法人大阪市立工業研究所, 生物・生活材料研究部, 研究室長 (30416309)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 重光 地方独立行政法人大阪市立工業研究所, 生物・生活材料研究部, 研究員 (20509822)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | Staphylococcus aureus / S. epidermidis / アトピー性皮膚炎 / パルミトオレイン酸 / 皮脂 / 抗菌活性 / 菌叢 / スキンマイクロバイオーム |
Outline of Annual Research Achievements |
微生物と健康の関わりは腸内細菌だけではない。皮膚の菌叢も健康と疾病に大きくかかわっている。ここでは、アトピー性皮膚炎(Atopic dermatitis, AD)などの皮膚疾患と菌叢の関係に注目した。 ヒトの皮膚には多種類の微生物が存在し、Staphylococcus aureus (Au)とS. epidermidis (Ep)に関する研究が盛んである。健常者の皮膚ではAuよりもEpが優勢に存在するが、AD患者の炎症部ではEpよりもAuが優勢に存在し、ADの炎症悪化に関与している。そこで、皮膚の菌叢を好ましい状態に保つ、つまりAuを抑制しEpを抑制しない素材の研究を目的とした。 従来の活性評価法は、液体培地を用いた単一微生物に対する最少生育阻止濃度である。本研究の最終目的は、複数微生物が混在する皮膚へ塗布する医薬部外品・化粧品素材であり、前記の評価法は実情に合致しない。そこで本年度は、Epだけが生育してくる素材開発を目的とし、皮膚塗布モデル系として、AuとEpが共存する寒天培地を用いて、どちらの微生物が優先化するかを調べる新規抗菌活性評価法を開発した。詳細な手法は略するが、両菌株を塗布した寒天プレートに、配合品(この中に9c-C16:1を懸濁)を、化粧品の現実的な塗布量に近い2mg/cm2で寒天表面に塗布して培養した。生育してきた菌を回収し、両菌の違いの判別が可能な卵黄添加マンニット食塩寒天培地に塗布後、生育してきた両菌株の相対比を求めた。その結果、皮膚表層が弱アルカリ性であるアトピー性皮膚炎を模したpH7.5の寒天培地の時、C16:1が2500ug/mLの試料懸濁液を塗布してもAuが抑制されず、両菌株がほぼ同等に生育した。寒天培地のpHが酸性側にシフトするにつれて、Auが抑制される傾向が認められた(Epは生き残る)。健常者の皮膚を模したpH6.0の寒天培地を用いた時、C16:1が156ug/mL以上の試料懸濁液を塗布したとき、Auが完全に抑制され、Epが生き残る選択的抗菌活性が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
年度当初の計画は新しい抗菌活性の評価法である。この評価法を完成し、また、健常者とアトピー患者の菌叢の違いも証明できたことから、本年度の計画は順調に進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
科研費の最終目標の実験を行う。実用化を想定し、ウクライナなどで大規模に生産されているオレイン酸(9cis-C18:1)含量の高いハイオレイック向日葵油を基質として、菌体内にワックス(脂肪酸と脂肪族アルコールのエステル体)を蓄積するAeromonas属細菌を培養し、9cis-C18:1をパルミトオレイン酸異性体(7cis-C16:1)に変換する。なお、この菌は、基質となる脂肪酸のβ酸化により、2または4個炭素数の少ない脂肪酸を蓄積する。 得られたワックス中には、抗菌活性を妨害する9cis-C18:1と、2つの菌株の両方を抑制するミリストオレイン酸異性体(5cis-C14:1)が混在するので、7cis-C16:1を酵素で精製する方法を開発する。酵素として、Candida rugosa由来、Rhizopus oryzae由来のリパーゼなどを試す。これらの酵素は、加水分解やエステル化反応で脂肪酸の選択性が期待できる。
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Causes of Carryover |
28年度の研究に用いるリパーゼやGCカラムなどの試薬代に経費を要することが推定されることなどから、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
リパーゼやGCカラムなどの試薬代に使用する。
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Research Products
(10 results)