2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26450123
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
関 光 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30392004)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 植物 / トリテルペン / 生合成 / 転写制御因子 / プロモーター |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、植物トリテルペノイドの代表格であり漢方原料植物であるマメ科カンゾウ(甘草)が特異的に生産するグリチルリチンおよびマメ科植物全般が生産するソヤサポニンに注目し、申請者らが先に同定しているこれらの生合成酵素(β-アミリン合成酵素、CYP88D6およびCYP93E3)遺伝子の発現制御に関わるシス因子および転写制御因子の同定を目的とする。 平成27年度は、平成26年度中に選抜した計8種の候補転写因子について全長コード領域を含むcDNA断片の単離ならびに各候補転写因子を構成的プロモーターであるCaMV35Sプロモーターの下流に連結したエフェクターコンストラクトの作製と上記トリテルペノイド生合成酵素遺伝子プロモーターに対する転写活性化能の解析を行った。タバコBY-2培養細胞由来プロトプラストへのレポーター/エフェクターコンストラクトのコ・トランスフェクションによる転写活性化能解析の結果、8種の候補転写因子のうち2種がβ-アミリン合成酵素およびCYP93E3遺伝子プロモーターからの転写を有意に活性化することが判明した。さらに、β-アミリン合成酵素およびCYP93E3遺伝子プロモーターを5‘上流側から段階的に欠失させたディリーションコンストラクトを作製し同様の実験を行うことで上記の候補転写因子が作用すると推定されるシス領域を特定した。 上記の実験と並行して、グリチルリチンおよびソヤサポニンと同じくβ-アミリンから派生するオレアノール酸の生合成に関わる新規酵素の探索を進め、CYP716Aサブファミリーに属するシトクロムP450酸化酵素を同定するとともに、その遺伝子プロモーターを単離した。本酵素はグリチルリチンおよびソヤサポニン生合成経路と拮抗する経路に関わる酵素であるため、β-アミリン以降の生合成経路の分岐を転写制御因子がどのように制御しているのかを解析する上で重要な発見である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度中に選抜した計8種の候補転写因子についてBY-2プロトプラストを用いた転写活性化能の評価を行い、2種の候補転写因子がβ-アミリン合成酵素遺伝子およびCYP93E3遺伝子プロモーターからの転写量を有意に増高させることを確認した。また、候補転写因子が作用すると推定されるプロモーター領域を特定できたことから当初の予定よりも順調に進展している。さらに、これらの転写因子を高発現する、あるいは、転写抑制ドメインを融合したキメラリプレッサーを発現する形質転換カンゾウ毛状根を作出すべく、アグロバクテリウム法による遺伝子導入/毛状根作出に必要となるバイナリーコンストラクトをすでに構築し、遺伝子導入条件の最適化に着手している。さらに、当初の計画以上の成果として、グリチルリチンおよびソヤサポニンと同じくβ-アミリンから派生するオレアノール酸の生合成に関わる新規シトクロムP450酸化酵素を同定するとともに、その遺伝子プロモーターを単離した。これにより、本遺伝子プロモーターに対する候補転写因子の活性化能の評価も可能となった。以上のことから、研究全体は概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度内にβ-アミリン合成酵素遺伝子およびCYP93E3遺伝子プロモーターに対する転写活性化が確認された2種の転写因子について、これらを高発現する、あるいは、これらの転写因子に転写抑制ドメインを融合したキメラリプレッサーを発現するカンゾウ組織の作出と代謝物分析を目指して、アグロバクテリウム法による形質転換カンゾウ毛状根作出を行う。同時に、昨年度中に新たに単離したオレアノール酸生合成関連P450遺伝子プロモーターに対する転写活性化能を解析する。また、先に取得しているカンゾウトランスクリプトームデータからCYP88D6遺伝子プロモーターに対する転写活性化能を示す候補転写因子の探索と機能解析を継続する。
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Causes of Carryover |
当初の予想よりも少ない数の候補転写因子について機能解析することでポジティブな結果が得られた。そのため、DNAクローニングおよびシークエンシングに必要な試薬代を大幅に節約することができた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の予想よりも多くの成果が得られているので、学会発表、論文投稿に係る経費を当初よりも増額する必要がある。また、機器メンテナンスに係る費用が当初の予測よりも多くなる見通しのため、これらに使用する。
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