2015 Fiscal Year Research-status Report
立体構造のトポロジーから紐解くDyP型ペルオキシダーゼの合理的改変
Project/Area Number |
26450132
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
菅野 靖史 日本女子大学, 理学部, 教授 (90282855)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 立体構造のトポロジー / DyP型ペルオキシダーゼ / タンパク質機能 / 分子進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、26年度に再分類したDyP型ペルオキシダーゼファミリーのVクラスの機能について調べた。Vクラスは、以前の一次構造の相同性のみに基づいた分類では、別々のクラスに分けられていた(クラスCとD)。これに対して、我々は、この2つのクラスが立体構造を基にしたアライメントで、別々ではなく同一のクラスであると提案した。その結果、Vクラスには真核生物由来と原核生物由来のものが混在することが明らかとなった。一次構造の相同性が低くても立体構造的の相同性が高ければ、機能も類似している可能性が高い。そこで今年度は旧クラスCに属するStreptomyces avermitilis由来のSaDyP2をStreptomyces lividansで異種発現し、精製プロセスを確立し、生化学的データを取得することとした。精製を容易にするためSaDyP2のC末端側にHisタグを付加した。ニッケルアフィニティクロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィーを通して、電気泳動的に単一バンドとなるまで精製した。これを用いて、SaDyP2の基質特異性、耐熱性、至適pH等を調べた。至適pH、耐熱性については、これまで知られているDyP型ペルオキシダーゼと同様であった。基質特異性については、旧クラスDの特徴であるアントラキノン染料に対する高い分解活性を有していた。つまり、旧クラスCのDyP型ペルオキシダーゼは、立体構造、機能共に旧クラスDと類似の性質を持つことを示しており、CとDが同一のクラスVとして分類されるべきである、という提案を実験的に証明した。これにより、タンパク質の分類は、立体構造のトポロジーに基づいて行われるべきであることが明確となった。この成果は、同時に、立体構造の類似性に着目することで、改変すべきアミノ酸を合理的に絞り込むことが可能となることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、SaDyP2の大腸菌での異種発現に注力したが発現量が安定せず、発現系をStreptomyces lividansに変更したところ、著量の発現と精製タンパク質の取得が可能になった。これにより、生化学的研究が進むと共に、結晶化にも着手できている。
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Strategy for Future Research Activity |
Streptomyces lividannsの発現系が非常に良好に機能しているので、27年度の後半から着手している結晶化実験に注力し、立体構造解析につなげたい。構造情報と生化学的データからDyP型ペルオキシダーゼの合理的改変につなげることを目指す。
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Causes of Carryover |
タンパク質の結晶化および構造解析の実験が平成28年度に本格化すると見込んで、27年度中の支出を抑え、28年度の予算として繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
結晶化条件の確定と構造解析により改変すべきアミノ酸を絞り込むことに注力する。
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Remarks |
研究内容等は、随時、菅野研究室のホームページで発信している。
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