2014 Fiscal Year Research-status Report
北海道太平洋沿岸の海霧を考慮した気候的乾湿度に対する海浜樹木の環境応答
Project/Area Number |
26450206
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Research Institution | Hokkaido Research Organization |
Principal Investigator |
真坂 一彦 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 森林研究本部林業試験場, 主査 (60414273)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 江利子 独立行政法人森林総合研究所, その他部局等, 研究員 (20353584)
岩崎 健太 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 森林研究本部林業試験場, 研究職員 (70723047)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 気候的乾湿度 / 海霧 / 生理学的応答 / 海岸林 / カシワ |
Outline of Annual Research Achievements |
気象観測機器(記温湿度計,照度計)を石狩,天塩,浜頓別,白糠,新ひだか,長万部,江差の7ヵ所に設置し,生育期間中の気象データを観測した。また,石狩と白糠,長万部では土壌水分計も設置し,深度別の堆積含水率を観測した。 カシワ葉の気孔コンダクタンスは,上記7地点に加え,小平,湧別,斜里,大樹,伊達,森,瀬棚において8月下旬に調査を行った(白糠では7月と8月の2回,石狩では6月,7月,8月の3回)。併せて葉を採取し,炭素安定同位体比(δ13C)と窒素含有量,クロロフィル含有量の分析を行った。大気湿度との間には明瞭な負の相関関係が認められ,葉の蒸散速度は湿度が高いほど低いことが明らかになった。δ13Cを分析した結果,白糠が最も高い値(平均値-28.04‰)を示し,伊達が最も低い値(平均値-30.49‰)を示した。ただし,湿度計を設置した7地点について,生育期間中の平均大気湿度と葉のδ13Cのあいだには有意な相関関係は認められなかった。そのため,湿度以外の要因も加味した評価が必要であろう。一方,平均クロロフィル量と平均δ13Cのあいだには上に凸の二次曲線が有意にあてはまった。この結果は,クロロフィルの充填状況が低くても高くてもδ13Cが高くなる傾向があることを示唆している。 白糠と石狩で土壌水分の動態を比較すると,白糠の土壌が概して恒常的に含水率が高い傾向が認められた。これは平均気温が低いことに加えて,海霧によって日照時間が短いことで,地表からの蒸散が少なくなっていることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に記載した調査項目はすべて達成しており,順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今回調査した中で炭素安定同位体比(δ13C)がもっとも低い値を示した伊達をはじめ,気象観測機器を新たに2ヵ所設置して,データに厚みを加える予定である。
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Causes of Carryover |
物品に残額が生じた理由は,当初予定していた消耗品の損耗がほとんどなかったこと,そして窒素分析用のキャリアーガスであるヘリウムの納入が,世界的なヘリウム供給不足によって遅れているため。旅費に関しては,当初予定していた出張のうち天候不順によって中止になったたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
調査地点数が多ければデータの精度が増すため,繰り越し分に関しては,新たに調査地点を増やすために気象観測機器を買い足す予定。
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