2015 Fiscal Year Research-status Report
ジャトロファに含まれる抗酸化物質の高度利用に関する化学的研究
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26450231
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
鈴木 利貞 香川大学, 農学部, 准教授 (80346634)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片山 健至 香川大学, 農学部, 教授 (00152687)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ジャトロファ / 抗酸化活性 / 抽出成分 / リグナン / ネオリグナン / バイオディーゼル |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 化学合成:カフェ酸エチルを無水THF中でDIBAL-Hにより還元し、カフェイルアルコールを得た。これをアセトンートルエン中で脱水素重合させ、(±)-isoamericanol Aを選択的に高収率で得られた。 2. 粗酵素実験:カフェイルアルコールを西洋ワサビペルオキシダーゼにより脱水素重合させたとこと、カテコール型リグナン・ネオリグナン類の生成を確認した。この生成物から(±)- 3,3’-bisdemethylpinoresinol、(±)- isoamericanol Aが得られた。 3. 油脂安定性試験:合成したisoamericanol Aを酸化防止剤として用いた油脂安定性試験を行った結果、isoamericanolAはα-トコフェロールよりも高い抗酸化作用を有することが示された。このことからジャトロファ搾油カスに含まれるisoamericanol Aは、バイオディーゼル燃料を生産する際の抗酸化防止剤としの利用が期待され、バイオマス資源としての利用価値が見出された。 4. イソアメリカノールAの抗ガン活性について調べた結果、4種類のヒトガン細胞(MCF-7、MDA-MB231、HuH-7、Hela細胞)の細胞増殖を濃度依存的に抑制した。MCF-7細胞を用いた遺伝子解析により、イソアメリカノールAはG2/M期で細胞周期停止させ、BTG2、p21、GADD45A遺伝子の発現が増加していたが、CDK1、cyclins B1とB2の遺伝子の発現が減少していた。このことから、イソアメリカノールAは、抗ガン剤としての利用が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.抗酸化物質の化学合成、2. 粗酵素実験は、当初の研究計画通りに進行した。3.油脂安定性試験については、ジャトロファ搾油カスに含まれる抗酸化活性成分をバイオディーゼル燃料の酸化防止剤として有効利用できることを示した。また、4.抗ガン活性については、イソアメリカノールAは抗ガン剤としての利用が期待される結果が得られ、当初の計画以上に研究が進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 代謝解析:粗酵素実験の結果を踏まえ、二重標識したケイヒ酸、カフェ酸を用いた生合成経路の解析を行う。 2. 化学合成:カフェ酸を西洋ワサビペルオキシダーゼと過酸化水素、あるいは炭酸銀を用いて脱水素重合を行い、カルボキシル型リグナン・ネオリグナン類を得る。さらに、これらを還元させることによりカテコール型リグナン・ネオリグナン類のアルデヒド体の化学合成を行う。 3. 抗酸化物質の構造活性相関:化学合成した抗酸化リグナン・ネオリグナン類は、同様に抗酸化活性試験を行い、官能基と抗酸化活性について構造活性相関を評価する。さらに、抗酸化物質とDPPHを反応させた後にNMRを測定し、ラジカルを消去する際の化学構造の変化を明らかにする。 4. 抗酸化物質の定量実験:単離・同定した抗酸化物質についてHPLCによる定量方法を確立し、種子、植物体、殻などに含まれる含有量を測定する。また、地域や栽培条件によって含有量に変化があるのかについて検討を行う。
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