2015 Fiscal Year Research-status Report
スギ辺材心材間のアポプラスティックな水移動機構の三次元解析
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26450233
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
内海 泰弘 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (50346839)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢崎 健一 国立研究開発法人 森林総合研究所, その他部局等, 研究員 (30353890)
永井 智 兵庫県立農林水産技術総合センター, その他部局等, 研究員 (30463417)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | スギ / 辺材 / 心材 / 水移動 / アポプラスティック |
Outline of Annual Research Achievements |
我が国で最も重要な造林樹種であるスギは,その心材含水率は個体間で大きくばらつくため,材の均質な乾燥が困難で,近年利用が拡大している乾燥材への対応に問題を生じている.しかし,そもそもスギ心材の含水率を決定する水の起源と移動経路,移動集積機構について十分には理解されていない.そこで本研究ではスギの心材に集積する水の移動経路,特に生細胞の内部を経由しないアポプラスティックな経路における水移動機構について,水の局在解析と蛍光トレーサーによる経路解析を行う事を目的としている. 前年度は既往の研究でも検討されてきた複数年輪を横断する放射方向の移動経路での定量的な水移動解析と酸性フクシン水溶液を用いた定性的な経路解析を行った.その結果,辺材および心材内での放射方向の水移動が起こること,一方で,放射方向の水移動には時間を要することが示唆された.また,酸性フクシンを水のトレーサーとして蛍光観察した結果,酸性フクシンは浸漬部近傍の細胞壁を強く染色したことから,細胞壁を介した放射方向のアポプラスティックな水移動経路が存在すると考えられた. 今年度は軸方向の水移動経路について検討するため,一定の高さごとに各年輪における辺材と心材の分布を把握し,辺材と心材の樹幹内分布について三次元で解析した.その結果,同一年輪において樹軸方向で辺材から心材に変化する事が明らかとなった.このことから,樹軸方向では経路上での大きな抵抗が予想される年輪境界を経由しない辺材・心材間の移動経路の可能性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度は既往の研究でも検討されてきた複数年輪を横断する放射方向の移動経路での定量的な水移動解析と酸性フクシン水溶液を用いた定性的な経路解析を行った.辺材から心材までを含むスギの気乾木部ブロックを作成し,辺材側と心材側を水と接触させる処理を行い一定時間経過させたたところ,いずれの試料でも水と接触した部位の近傍では含水率の増加が認められた.一方で辺材を水に浸漬させた試料では心材の含水率増加は認められず,心材を水に浸漬された試料では辺材の含水率増加は認められなかった.これらの結果から辺材および心材内での放射方向の水移動が起こること,一方で,放射方向の水移動には時間を要することが示唆された.また,酸性フクシンを水のトレーサーとして蛍光観察した結果,酸性フクシンは浸漬部近傍の細胞壁を強く染色したことから,細胞壁を介した放射方向のアポプラスティックな水移動経路が存在すると考えられた. 今年度は軸方向の水移動経路について検討するため,一定の高さごとに各年輪における辺材と心材の分布を把握し,辺材と心材の樹幹内分布について三次元で解析した.その結果,同一年輪において樹軸方向で辺材から心材に変化場合があることを明らかにした.このことから,樹軸方向では抵抗となり得る年輪境界が関与しない辺材・心材間の水の移動経路の存在が示唆された.また,辺材と心材は一般に材色の違いにより定性的に表現されるが,これを定量的に識別するための画像解析技術を検討した.その結果グレースケールのヒストグラム解析により材色を定量化できることを明らかにした.
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Strategy for Future Research Activity |
26,27年度に引き続き放射方向と軸方向の水移動経路を評価する実験を行い,放射方向の水移動経路と軸方向の水移動経路を解剖学的に解析し,辺材と心材をつなぐ三次元での水移動ネットワークの存否を明らかにする.なおこれまでは組織構造の解析に主軸を置いてきたが,今年度はこれに加えて三次元での水の移動と分布を組織レベルで解析する.
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Causes of Carryover |
今年度は必要としなかった物品を次年度購入するため次年度使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後の推進方策で述べた実験計画を遂行するための物品を購入する予定である.
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Research Products
(1 results)