2014 Fiscal Year Research-status Report
広島の復興・成長・停滞期における公的及び民間食料流通システムの役割の検証
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26450313
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
矢野 泉 広島大学, 生物圏科学研究科, 准教授 (90289265)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 生鮮食料品 / 卸売業者 / 広島 / 歴史 / 中央卸売市場 / 戦後復興 / 都市近郊野菜産地 |
Outline of Annual Research Achievements |
食料の分配過程における公的システムと民間システムの役割について、平成26年度については、第2次世界大戦から今日までの広島における農業生産と食料分配の史実、及び公的流通としての卸売市場の歴史展開についての掘り起こしを、文献収集と聞き取り調査により行った。 文献資料の収集は、広島県公文書館、広島市公文書館、古書店等で行い、広島市とその近郊における生鮮食料品産地の変遷、青果物取扱商店の立地について整理した。その結果、戦前に民間青果物市場が展開した地域には、戦後も闇市的な取引から発展した商業集積地域が再建される一方、原爆により焦土と化した旧広島市内の青果物生産が本格されるまでの間に野菜供給基地としての重要な役割を担う旧広島市郊外(現広島市安佐南区)の産地形成と同時に、それら地域と旧市内を結ぶ水運を利用した集積地として横川地区における青果物取引の発展がみられ、当時の青果物取扱商店が今日の地元量販店や青果物卸売業者へと発展していったケースがみられた。 また、聞き取り調査については、公的システムとしての中央卸売市場の歴史について広島市に聞き取り調査を行うとともに、広島内で戦前から事業を行っている大規模、中規模の青果物卸売業者の会長、代表取締役等から、各企業の歴史と、戦前・戦中・戦後の広島市内の青果物取引事情について聞き取りを複数回行った。中央卸売市場設立により、戦後旧市内に散在した青果物取引業者が集積されることになったが、卸売市場入場に当たり業者間の競合や協力等において多くの問題が発生した。この問題の解決プロセスは本テーマにとって重要であり、また今日の卸売市場内における業者間関係にも影響を与えていると思われるため、次年度も継続調査していくこととする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
文献収集については積極的に行うことができた。新しい史実の掘り起こしと関連付けのためには新聞記事や各業界のお知らせ等雑多な資料の整理が必要であり、収集資料の整理については中途であるので、継続的に行っていきたい。 また、聞き取り調査についても、公的システム関係者の聞き取りについては十分行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度からの継続研究として、民間の生鮮食料品流通業者からの聞き取り調査と資料整理を行う。文献収集と整理について当初予定していた以上に時間を要することが判明したため、より計画的に行うことが必要と考える。 また、平成27年度に予定する「広島の産業の復興と発展過程における食料の分配構造を明らかにする」というテーマに沿って、金融や交通、食品産業等関連産業の歴史的展開について、統計資料の収集と分析を行う。またその分析結果を、農業生産構造の変化、都市(労働市場)の形成、公設卸売市場の設立、民間流通業者の機能変化等との関係を時系列にそって整理し、食料分配の担い手と食料分配円滑化のための社会システム全体の態様を明らかにしたいと考える。 また、平成26年度の成果を、所属機関の紀要等に発表する予定である。
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