2016 Fiscal Year Research-status Report
広島の復興・成長・停滞期における公的及び民間食料流通システムの役割の検証
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26450313
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Research Institution | Hiroshima Shudo University |
Principal Investigator |
矢野 泉 広島修道大学, 商学部, 教授 (90289265)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 生鮮食料品 / 卸売市場 / 公益性 / 差別的取り扱いの禁止 / 受託拒否の禁止 / 農産物取扱商業資本 |
Outline of Annual Research Achievements |
広島市の戦後経済の復興過程における生鮮食料品流通に関わる公的システムと民間システムの役割について、平成28年度は主に3つの課題についてとりくんだ。第1は、昨年度までに収集した昭和初期の広島市の生鮮食料品市場に関する史料の整理・分析である。第2は、戦後の広島の都市計画における商業立地や商業政策の整理である。第3は、1990年代以降の経済低迷期における規制緩和の動きと公的流通システムの社会経済的位置づけの変化についての整理と理論的検討である。 その結果、第1及び第2の課題に関連し、昨年度に構築した「戦中及び終戦直後の統制経済時においては民間流通業者が公的な機能(流通機能を通じた市民への公益性の発揮)を果たしている」という仮説に対し、特に戦後の食糧配給と闇市等の市民の食料品調達において、かつての都市郊外(現在は市街地に編入)の農村とつながりのある農産物取扱商業資本等が実際の食料品配分を担い、その過程で資本を蓄積し現在も広島市商業の重要な位置を占めていることが明らかになった。また、第3の課題に関連し、公的流通システムの公益性について改めて検証し、卸売市場法の定める内容のうち「差別的取り扱いの禁止」「受託拒否の禁止」に関する項目が果たしてきた役割がもっとも重要であることを明らかにした。 平成28年11月に政府与党が発表した「農業競争力強化プログラム」により卸売市場は大きな転換期を迎えており、従来わが国の生鮮食料品流通の要となってきた公的流通インフラともいえる卸売市場の意義や役割の見直しが検討されている。こうした状況下であったため、本研究の公表が求められる機会が多くあり、一般や卸売市場関連事業者に向けた講演会を年度内に6回行った。学術的成果としては、平成29年度日本農業市場学会、及び日本流通学会で公表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年11月に公表された「農業競争力強化プログラム」に伴う研究成果とりまとめの加速が求められた時期に、体調を崩したため、成果の学会での公表が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの進捗状況」に示したよう、平成28年度に行う予定であった成果の公表機会として、平成29年7月開催日本農業市場学会でのシンポジウムコメンテーター、10月開催での日本流通学会での自由論題報告を予定している。また研究成果を精緻化するため、平成28年度前半において補足調査や関連研究会への参加を行う。
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Causes of Carryover |
研究代表者が平成28年10月終わりから体調を崩し、検査や療養のため約1カ月間研究を遂行することができない状況が生じた。それにともない、12月にエントリーする予定であった平成29年3月末開催の日本農業経済学会での発表に間に合うことができなかったためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年7月に岩手大学で開催の日本農業市場学会シンポジウム「農政の大転換と市場・流通再編」において、本研究の成果(主に平成28年度分)をコメンテータ報告として発表する予定である。また、本研究の全体的な成果を、平成29年10月に京都大学で開催される日本流通学会の自由論題報告として発表し、その後論文として投稿する予定である。
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