2014 Fiscal Year Research-status Report
ガーナにおける市場経済化と小農生計メカニズムの変容に関する研究
Project/Area Number |
26450333
|
Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
中曽根 勝重 東京農業大学, 国際食料情報学部, 准教授 (10366411)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 市場経済化 / ガーナ / 小農生計メカニズム / 農村の変容 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、市場経済化の影響によって変化が加速するガーナの農業部門に注目し、農業の担い手である小農の生計メカニズムの実態を明らかにした上で、市場経済化の影響による農村の変容を解明することである。 初年度である平成26年度には、関連資料・文献の収集等による先行研究のサーベイと研究対象国における現地調査を実施した。 現地調査は、ガーナ北部地域の2ヵ村から10戸の農家を選定し、合計で45名の農民を対象に、(1)農村全体を把握するための村落レベル、(2)小農における家族構成や生活などを対象とした世帯レベル、(3)栽培作物や生産・消費と非農業活動などを対象とした個人レベル、(4)栽培技術や労働手段などを対象とした畑レベル、そして、(5)農作業日程や投入産出などを把握するための作物レベル、という5段階に分類して聞き取り調査を実施した。 その結果、①ガーナ国内の経済成長による物価上昇の影響を受け、農業投入財の価格上昇が、農業経営に悪影響を与えている、②その結果、ガーナ北部における農産物の生産性が停滞している、ことが明らかとなった。 この調査結果に影響を与えている要因としては、ガーナでは市場経済化の積極的な取り組みにより、民間企業の直接投資が増加傾向にあるが、その一方で農業投入財の価格高騰と農産物価格の停滞というアンバランスな価格変動が続いており、多くの小農において農業活動を維持するのが難しくなってきていると同時に、都市部と農村部における経済格差の拡大や農村部における人口増加と土地の細分化などが大きな影響を与えていることが考察される。 このような問題点が明らかになったことにより、今後の課題としては、農産物の価格上昇や生産性の向上を図るといった従来の農業開発戦略だけにとらわれず、これまで以上に農村の現状と実態を把握し、市場経済化の影響による農村の変容を解明することの重要度が再認識された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の初年度の研究計画は、研究対象地域の関係資料・文献の収集を実施し、先行研究をサーベライズするとともに、現地調査を実施することであった。現地調査に関しては、平成26年度を予備的調査として位置づけ、①本調査を効率的に実施するための研究環境整備、②調査対象農村および事例調査対象農家の選定、③(1)小農の農業生産技術の解明、(2)小農の営農体系と農業経営の解明、(3)小農の生計メカニズムの解明、(4)慣習制度の実態と制度的改革の検討、という4つの研究課題の妥当性の確認、を実施することが目的であった。また②の調査対象選定にともない、(a)調査対象農村の位置づけおよび概要、(b)事例調査対象農家の家族構成や所有土地面積などといった基本情報、(c)農業様式の概観や小農の生計に関わる非農業活動などの把握といった基礎情報について、農村・農家における面接およびアンケート調査を行った。 上記の研究計画には、おおむね順調に進み、調査結果からは、従来計画していた以上の成果を得ることができた。そのため、現在までの達成は、「おおむね順調に進展している」と評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成27年度以降は、平成26年度と同様に、資料・文献収集と先行研究のサーベライズを実施するとともに、平成26年度に選定した調査対象農村および事例調査対象農家において、①小農の農業生産技術の解明、②小農の営農体系と農業経営の解明、③小農の生計メカニズムの解明、④慣習制度の実態と制度的改革の検討、という4つの研究課題について面接・アンケート調査を実施する。とくに平成27年度は、本研究の本調査と位置づけし、現地調査における研究課題4項目全ての研究課題の現地調査を実施し、アンケート調査結果はできる限り現地で可及的にパソコン入力・整理を行い、調査データを確認しながらの現地調査を実施する。 なお、各研究課題への取り組みは、以下の通りである。研究課題①では、栽培技術(耕耘、播種、除草、収穫などの栽培技術)と栽培作物(主食作物、換金作物の栽培状況と利用)について調査を行い、農業生産技術を総合的に把握する。研究課題②では、営農調査を行い、農家・集落レベルの営農体系と農業経営の分析を行う。研究課題③では、農業生産活動(生産と消費・販売と生活の関わり)と非農業活動の調査・分析を行い、小農生計メカニズムを解明する。研究課題④では、研究課題①から③までを総合的に考察し、農村社会システムを理解するとともに、土地制度や家族制度などを把握した上で制度的改革の可能性について考察する。
|
Causes of Carryover |
平成26年度は、予備調査と位置づけていたため、①当初予定していた期間を短縮しての調査を実施したことによる旅費の削減と、②その他費で予定していた会議費など使用しなかったことによる。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は、本調査と位置づけているため調査期間の延長と現地での研究協力者の確保を強化したいと考えている。そのため、①出来るかぎり長い滞在での調査実施にかかる旅費の増額、②現地での研究協力者との会議開催や研究協力費での支出、を計画している。
|