2014 Fiscal Year Research-status Report
牛趾皮膚炎病態解明・制圧のための細菌学的・疫学的研究
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26450406
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
山崎 渉 宮崎大学, 農学部, 准教授 (70393262)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 趾乳頭腫症 / 牛 / 蹄 / クローニング / 細菌叢 / Treponema属菌 / Treponema vincentii / LAMP |
Outline of Annual Research Achievements |
牛趾乳頭腫症(PDD)罹患牛4頭を試験対象とし、抗生剤(リンコマイシン)あるいは生菌製剤による治療前後の患部から、バイオプシーによりPDD病変計8材料を採取した。クローニングにより、各細菌叢の比較解析を実施した。治療前のすべての材料からTreponema属菌が高頻度(37.8-79.6%)に検出されたが、治療後の材料からの検出は極めて低頻度0-10.8%)であった。Eubacteriaceae科も低頻度ながらすべての材料から治療前(1.8-10.6%) に検出され、治療後(0-0.6%)では低下傾向が認められた。他に同様の傾向を示す細菌は認められなかった。一方、治療後の材料からAnaerococcus、Bacteroides、Finegoldia、Helicoccus、Psudomonas属菌等が治療前と比較して高頻度に検出され、治療前後におけるPDD病変部菌叢の変遷ならびにTreponema属菌がPDDの有力な原因の候補であることが示唆された。
さらに、米国Wisconsin大学Dorte Dopher博士との国際共同研究を2014年8月から開始した。その結果、LAMP法によるTreponema属菌の迅速検出法開発に成功した。菌種包括的な検出系と3種の菌種毎の検出系をそれぞれ開発した。これにより、PDD病変部からTreponema属菌陽性サンプルのみをスクリーニングし、菌を効率よく分離するシステムの構築が可能となった。本システムを用いて、T.vincentii様菌(16S rDNA塩基配列解析により同定)の分離に国内で初めて成功した。しかし、継代中に菌株保存に失敗したので、培養・保存条件を再検討した上で、来年度以降の研究をさらに発展させる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PDD罹患牛治療前後の患部材料の細菌叢比較解析により、Treponema属菌がPDDの有力な原因の候補であることが示唆することができた。Treponema属菌の全ゲノム塩基配列解析にはまだ着手できていないが、クローニングによる治療前後の細菌叢解析は順調に進展している。
本研究室において開発したTreponema属菌分離用培地(PDD Tp培地)に牛蹄部皮膚破砕乳剤液を加えた新規培地にて、PDD病変部からのTreponema属菌の分離率改善を試みたが、分離率の有意な改善は認められなかった。新たに海外研究機関で使用例のある嫌気性難培養菌用の増菌培地と分離培地を輸入し、Treponema属菌の分離を試みた。その結果、日本国内で初めてT. vincentii様菌の分離に成功した(16S rDNA塩基配列解析による同定。菌株保存には失敗、DNAは保存済)。
米国Wisconsin大学Dorte Dopher博士との国際共同研究により、Wisconsin大学保存菌株を使用したLAMP法によるTreponema属菌の迅速検出法開発に成功し、PDD病変部からTreponema属菌を効率よく分離するシステムを構築することができた。本システムを日本国内サンプルに対して用いて、T.vincentii様菌の分離に国内で初めて成功した。それゆえ、本国際共同研究は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
保存したT. vincentii様菌DNAを使用して、本菌の遺伝学的特性を精査していく。さらに、今回新たに開発に成功したLAMP法によるTreponema属菌の迅速スクリーニングシステムに加えて、培養・保存法を改善することにより、Treponema属菌を効率良く分離した上で、これらの分離菌を用いた病原性解析を進展させる。
次世代シークエンサーを用いてPDD病変部の詳細な細菌叢解析を実施し、治療前後ならびに病態ステージ毎の菌叢変遷の動態を明らかにする。
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Causes of Carryover |
データ解析用ソフトウェアを新規に購入する必要性が生じた(後述)が、平成26年度残予算のみでは不足するため、平成27年度予算と合算して購入することとした。それゆえ、次年度使用額が発生した。ソフトウェア購入の必要性が明らかになった時点では、平成27年度予算の前倒し使用期限が過ぎていたため、平成26年度予算の一部を平成27年度に持ち越した上で、平成27年4月に当該ソフトウェアを購入することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
クローニングおよび次世代シークエンスデータ解析用ソフトウェアSequencher for Windows V5.3(税込810,000円)を購入する。平成26年度は本学医学部林哲也研究室の協力下で、本ソフトウェアを借用していた。しかし、林研究室が平成27年4月1日より九州大学に移転したため、借用が不可能となった。その為、自研究室にて新たに購入する必要が生じた。
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Research Products
(3 results)